2023/08/11

⚫︎ブライス・マーデンが亡くなったそうだ。ぼくにとってマーデンは、抽象表現主義以降のアメリカの画家で最も影響を受けた存在で、アメリカ型モダニズム的絵画の最後の輝きと言っていい人なのではないかと思う。自分の過去の作品の様式を意味もなく折衷したような晩年の作品はまったく良いとは思えないのだが、80年代終わりから90年代にかけての「コールドマウンテン」シリーズの系統にある線を用いた作品から、どれだけの刺激と勇気をもらっただろうか。

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⚫︎最近、あまり観直すこともなかったが、改めて素晴らしいと思う。ある意味、ポロックが行き詰まった形式的閉塞を打ち破ったのがマーデンの「コールドマウンテン」シリーズだとも言えて(ポロックの行き詰まりを脱するためには、もう一度、布がキャンバスに貼られて、壁に立てかけられる必要があった、と)、だから、少なくともこの絵が描かれた1990年前後までは抽象表現主義は生きていたと言えると思う。とはいえ、ぼくとしては、今やるべきなのは、モダニズムの達成を、モダニズムという文脈から切り離して発展させる形で受け継ぐということだと思っていて、だから、改めてマーデンを観るということ、あるいは、今、マティスを観るということの意味は、モダニズムの復習、または(改めての批判も含めた)復権にあるのではなく、モダニズム魔改造するというところにあると思う。

(モダニズムの達成を引き受けつつ、メディウムスペシフィックという重力を振り切るためには、フォーマリストである必要がある、と考える。)

(いや、そうはいっても、マーデンやマティスが大好きだというところにこそ、その最大のモチベーションはあるわけだけど。)

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