⚫︎中野にある「水性」で、『セザンヌの犬』刊行記念トークイベント「『セザンヌの犬』では何が起こっているのか?」( 山本浩貴×山本ジャスティン伊等)。ぼくはここには存在しない体で、透明人間として話を聞いていた。
文芸誌あるあるだが、なんとか作品を掲載してもらえたとしても、翌月の「新人小説月評」で数行言及されるだけで、それ以外には特に反応はなしというのが現実で、それでも小説を書くのはとても楽しいので細々と書き続けたのだが、先細りでたち消えてしばらくはそれっきりになっていた(とはいえ、他の文章はともかく、小説だけはなんとか本にしたいとずっと思っていた)ところ、当時は「早稲田文学」の編集者でもあった山本浩貴さんに執筆を勧められ、でも、おそらくそれから完成した小説を山本さんにメールで送るまで一年か、もしかするとそれ以上かかってしまったように思うのだが、なんとかかんとか小説を書いて雑誌に掲載され、それがきっかけとなって続いてさらに二つ小説を書いて、そしてようやくそれらを本として出版できたのは、(最初の小説が掲載されたのが2011年だが、依頼されたのは2010年だったと思うので)、依頼を受けることで、約束したからにはとにかく締め切りまでに何かしらのものを書かねばならないという外的な強制力ができて、そのおかげで、それまでずっと躊躇し逃げていた「小説を書く」という覚悟をようやく決めることのできた時から数えると(「依頼と締め切り」という強制力がなかったら、まったくの暗中模索で書いた一作目を最後まで書くことはできなかったかもしれない)、一冊の本が出るまでに14年も時間が経ってしまった。
目の前で自分が書いた小説について、2時間半くらいにもわたって話し合われているのを聞いていて、自分が書いたものが、とにかく何人かの人には伝わったのだなあ、というか、ともかくも誰かの刺激にはなれたのだなあと実感できて、しかしそうなると欲が出て、あともう少しくらいは多くの人に伝わってほしいと思うようになる。
(追記。台風が来ていて大雨になるかもということだったので、靴と靴下の替えを持っていったが、特に強い雨はなかった。ただ、イベントからの帰り、家に着いたのは深夜1時くらいだったが、家の近くの川の水がすごく増えていて驚いた。台風が来るのはまだこれからなのに大丈夫なのだろうかと不安になった。翌日は、普段より少し多めくらいにまで水位が下がっていて一安心したが。実家は昔からずっと川に近くにあるが、以前は、この川の水位が気になることはなかった。つまり決壊するかもという不安を持つことがなかった。しかし近年では、台風が来るたびに水位が気になるようになった。昔はこんなになったのを見たことがないというくらいの水量にまで、けっこうしばしばなる。)
⚫︎山本浩貴さんによる発表の資料。
⚫︎お知らせ。続いて今度は、小鷹研理さんと、著者が登壇する刊行イベントを行います。日にちは9月23日(月曜日だけど休日)、場所は、RYOZAN PARK 巣鴨です。
『身体がますますわからなくなる』『セザンヌの犬』ダブル刊行記念トークイベント 小鷹研理×古谷利裕「自分(でない自分)に神経を通す」