●シュルルル、シュル、シュルルル、ベリベリベリベリ、というような音をたてて、道路の縁に溜まった落ち葉を自転車のタイヤで踏みつぶして進んで行く。勾配のきつい長くつづく坂を荒い息でペダルを漕いで登る。このきつい坂道を自転車で登るおかげで、日々、太く、堅く、カエルのようになってゆく自分の股に、まるで別の生物でも眺めているみたいな違和感を感じているのだが、筋肉というものが割合短期間についたりおちたりするのに比べて、心肺機能というのか、肺活量などはそうそう簡単には鍛えられないものらしくて、坂を登る時、足の筋肉としては、まだまだ大丈夫、どんどん行け、という感じでも、呼吸がそれについて行かない。だから、長く続く坂を登り切るのにかかる時間は少しづつ短くなってきているのだが、その「苦しさ」はほとんど変わらない。と言うか逆に、勝手にどんどんと先走って動いてしまう足の筋肉を意識的に抑えないでいい気になって突っ走ると、それに呼吸が全く追いつかずに、息が苦しくて死にそうになる。途中で追い抜かれた、競技用自転車にヘルメットの人とか、電気モーター付きの自転車のおばちゃんだとかと、間違って張り合おうなんていう気を起こすと、後でとんでもないことになる。坂を登り切ったところで右に曲がり、細い道に入ると、顔より大きいくらいのホオノキの落ち葉が散らばっていて、それを勢い良くバリバリッと踏み破って下り坂に入ってゆく。登り坂でかいた汗はすぐに冷たくなって身体に貼りつく。