●弟夫婦の子供の初節句、そしてもうすぐ一歳。
●『宇宙は本当にひとつなのか』(村山斉)を読んでけっこう意外だったのは、宇宙が思ったよりも限定的だということ。宇宙は、一三七億年前に誕生し、それはおそらくいつか消滅する。とんでもないスケールの時間ではあるが無限ではない。あるいは、超ひも理論によって予測される多元宇宙の数は、一〇の五〇〇乗個である。それは天文学的な数字だが、無限個あるわけではないらしい。さらに、超ひも理論によると宇宙は十次元であるという。十次元など具体的にイメージすることは無理だが、次元数もまた無限にあるわけではないことになる。つまり、多元宇宙や多次元を含めたとしても、宇宙は決して無限ではない。無限に広がるナントカではなく、けっこう限定的である。これは一体何を意味するのだろう。たとえば、決して無限ではない宇宙と、数学が扱う無限とはどのように関係するのか、みたいなこと。
超ひも理論によると、宇宙は時間の一次元と空間の九次元でてきていることになるそうなのだが、しかしそれでも「この宇宙」においては三次元としての空間が最も大きい(主流の?)ものとなっており、他の六次元は量子力学が扱うレヘルの《小さな次元》であるとのことらしい。そして「この宇宙」が、人間が誕生する程度には「上手くいった」宇宙である理由の一つに、三次元の空間性が《大きな次元》として(たまたま)成立したという点があることになっている。なんかこの感じって、『魂と体、脳』で描かれていたライプニッツの「共可能性」という感覚にすごく近い気がする。いや、ライプニッツではたった一つの予定調和的な宇宙があるわけなのだが、なんというか「この宇宙」だけに限ってみてみると、この宇宙内の調停のさせ方(「この宇宙」が上手くいっていることが前提とされている感じ)が似ているように感じる。この宇宙は、ライプニッツにとっては、「神によって最善の共可能性が計算されている世界」で、『宇宙は本当にひとつなのか』においては、「最善とまでは言えないかもしれないが、ほとんどが失敗である一〇の五〇〇乗回のトライのうちで例外的に上手くいっている宇宙」ということになる。
●昨日は引用しなかったけど、アインシュタインが考えた空間と重力の関係について説明している部分がすごく分かり易くて面白かった。と同時に、これが「重力」が異次元ににじみ出得る根拠ともなる。
《今のご質問は、どうして電磁気の力はわれわれと同じように三次元にへばりついているのに、重力だけは外に出られるのかということですね。これはアインシュタインに教わったことなのですが、アインシュタインが言うには、重力というのは空間自身にかかわったもので、物をとばすとかそういうものとは違うということなのです。
たとえば太陽の周りを地球が回っています。これは重力でそれが起きているわけですが、アインシュタインは太陽の周りの空間が曲がっているからだと言ったのです。これは、ゴム膜の上に鉄球を載せると沈むのに似ています。大きな重力をもつ太陽を空間に置くと、鉄球の周りのゴム膜が沈むように、空間も沈みます。ゴム膜や空間が沈むということは、それらが曲がります。その曲がっているところに、別のボールを置くと、コロコロと曲がって中心の方に近づいていきます。》
《つまり、重力は空間の性質として説明できるので、異次元であろうと空間には違いないので、空間である限りは、重力の作用で曲がると考えられるのです。曲がるということは力が及ぶということなので、重力は異次元に対しても作用することができるのではないかと考えられています。》
●あと、昨日の引用だけでは説明が不足していたところ。異次元で運動している粒子が、われわれには止まっているのに大きなエネルギーを持つように映る、というところで、なぜそれが、《規則性をもった飛び飛びの値》となるのかの理由。それは、ギターの弦を強く押さえずに軽く触れるだけで音を変化させられるハーモニックスのたとえで語られる。ギターの弦を強く抑えると、振動する弦の長さが変化して音が変わるが、軽く触れるだけの時は、振動する弦の長さは変わらずに、振動する波の長さだけが変化する。
《異次元はとても小さいと考えられているので、この中を動く粒子も小さいものです。したがって、量子力学のいう粒子と波の二面性が効いてきます。》
《振動する長さが変わらなくても、いろいろな音を出せるという性質はギターの弦だけでなく、異次元にも当てはまります。異次元の大きさが決まっている場合、その中を動いている粒子も波の性質をもっています。したがって、波打つ回数が一回の場合、二回の場合、三回の場合などと、それぞれの場合によって運動のしかたが決まっているのです。つまり、異次元の世界では、その中の粒子はバラバラに動くことはできません。粒子も波として存在するので、エネルギーは連続しておらず、飛び飛びの値をとります。異次元の粒子は波打つ回数が多くなればなるほど高いエネルギーをもちます。》