●「ビューティフルドリーマー」と、「エンドレエイト」+「まどか☆マギカ」を比較して、インターネット以前と以後とで物語内部における「夢」と「現実」という対比構造がどのように変化したのか、という内容の文章を書いていて(6月1日に公開されます)、そのために『叛逆の物語』を観直して思ったのだけど、冒頭の「ビューティフルドリーマー」状態を成立させるために、かなりすごいロジックを使っている。
「ビューティフルドリーマー」状態は、魔女化したほむらの結界の内部に形作られる。そのためには、まどかの力によって魔女という概念がなくなったこの宇宙で、ほむらを魔女化(一歩手前に)させなければいけない。まどかは、「魔法少女が必然的に魔女化する」という法則自体を書き換えたのではなく、そこに「魔女化すると同時に消滅する」という新しい法則(円環の理)を追加することで、事実上、魔女を存在させられないようにした。そこでインキュベーターは、特定の物理法則(「円環の理」)が及ばない「干渉遮断フィールド」という領域をつくったという設定になっている。「円環の理」という特定の法則のみを排除できるフィールドがあって、そこに魔法少女を閉じ込めれば、「この宇宙」に存在しないはずの「魔女」を出現させることができるはずだ、と。まるで理論物理学の啓蒙書を読んでいるみたいな感じの理屈になっている。
「まど☆マギ」本編は、感情を踏みにじる法則に対して、論理によってそれを無化するという話で、インキュベーターよりもまどかの方が頭がよかった、ということだろう。『叛逆の物語』では、それに対してインキュベーターがほむらを用いて逆襲を試みるのだけど、まどかには勝てなかったという話だ。しかし、まどかはインキュベーターには勝っても、ほむらの裏切りにはやられてしまう、と。