2021-10-03

●Spotlightに投稿した「苦痛トークン」にかんする記事を、ひとつにまとめてnoteにも投稿しました。

「苦痛のトレーサビリティで組織を改善する」(VECTION)

https://note.com/vection/n/n60f5ea44b139

苦痛を表明するという行為それ自体が、より大きな苦痛をもたらしてしまうリスクが高い「空気」が支配するこの社会で、匿名で苦痛を表明でき、それが改ざんされることなく正確にトレースされる「苦痛トークン」というアイデアは重要なものだと我々は考えています。

《苦痛トークンは、パブリックなブロックチェーンに記載されるため、改竄できず、しかも匿名で分散された、組織に対する変更要求権限となる。》

《苦痛トークンには、具体的な提案への評価の必要がなく、誰のせいでそうなっているのか、なぜ苦痛なのかわからないが、とにかく「苦痛」が生じている事実を匿名で表現できる、という特徴がある。》

《哲学者ハンナ・アレントは、組織の命令に従うだけではなく、ある種の勇気、命を危険にさらして命令に逆らい、人類にとっての正義を維持するような判断を個人に求めた。勇気はおそらく必要だ。しかし、個人の勇気に依存しすぎたガバナンスは持続可能ではない。勇気のある人は少ないし、増える見込みも特にないからである。》

《誰か特定の人間・主体に「責任」を取らせる、という方法自体、システムが複雑化した場合の制度維持方法として、もはや効果がなくなりつつある、と考えることもできるではないか。苦痛トークンは、「主体–責任」というペアを、「苦痛トークン–分散的変更」というペアに置き換えようとしているとも言える。》

苦痛トークンという考えのなかには、苦痛をトレースすることが、そのまま(人による権限や裁量、評価などを介さない)「自動的な組織の変革」につながるということが含まれており、それこそが重要だとVECTIONでは考えているのですが、しかしそこまでいかなくても、とりあえずは、苦痛の表明に「勇気」が必要でなくなり、トレースされた苦痛が(検閲や改ざんが不可能な形で)記録され、顕在化されるということだけでも、かなり大きなことではないかと考えます。

●なお、苦痛トークンについてもっと突っ込んだ話を知りたい方は、「早稲田文学」2017年初夏号掲載の「苦痛の貨幣から魅了されない権利へ 中枢の解体可能性と組織デザイン2」(西川アサキ)に詳細に書かれています。

http://www.bungaku.net/wasebun/magazine/wasebun2017es.html