2024/07/05

⚫︎蓮舫の今回の選挙で画期的なのは、「ひとり街宣」そのものだけでなく、その全体像をマップとして可視化したというところにあると思われる。一人一人が勝手にやっていることの全体像が見えるようになったことで、その全体像を見て、自分がどう動けば良いのかを、個々人それぞれが判断できるようになる。単純に、自分が一人ではないということも感じられる。

(現状では、現場から上がってくる個々の細かい情報を「集約した情報」を手にできるのは、一部の特権的な地位にいる人だけだ。その特権的な人によって加工される前の情報がナマの状態ですべての人に対して露呈することの意味。情報と予算のコントロールこそが権力の源泉であり、その特権性を失うことは権力を持つ人が最も嫌うことだろう。)

ただ問題だと思うのは、Googleマップのピンの大きさが一定で、影響力が正確に反映されないという点だ。プロパガンダとして考えれば、その点こそが利点ともいえるが(実際以上に影響を大きく見せられる)、状況の正確な反映という意味ではこれが大きな問題となる。つまりこれは正しくない偏った可視化なのだ。

例えば、一人の人が、2~30分くらい駅前に立っただけでも、大きな「R」のピンが一つ立つ。それと、同じ場所で、毎日一時間ずつ、七日連続で立っていた人がいるとしても、同じ場所である以上、ピンは一つでしかないだろう(仮にピンがたくさん立ったとしても重なってしまうので見えない)。明らかに質や効果が異なる二つの場合で、表現が同じになってしまう。これは、ひとり街宣をやる人々の意欲を鼓舞するかもしれないが、同時にその「効果」を見誤らせてしまうことにもつながる。

(一つの駅前に10分ずつ立って、沿線を一駅ずつ移動していくとすると、ピンの数はどんどん増えていくだろうが、その時「ピンを立てること」が目的となってしまう。それもデモンストレーションとしての効果にはなるが、出来事の表現としての正確さは失われる。)

(とはいえ、はっきりと数字で表現されるより、じわっと少しずつ点が大きくなって色が濃くなっていくぐらいのざっくりと感覚的なものの方が表現として「いい感じ」ではあるかもしれない。)

(ただ、質や効果の差がはっきりとは表現されないこと、ちょっと参加しただけでその表現が確実に現れることそのものが、参加したいが躊躇する人のハードルを下げるという側面があるとも考えられて、そしてそのことは案外重要なことなのかもしれない。)

このマップは「蓮舫が当選することが望ましい」と考える人が作った選挙運動の産物なのでこれで良いと考えることもできるが、しかし、初めからフェアな、どのような立場の人にとっても自分の行動の指針となる、信用に足るシステムを構築した方が、結果として誰か特定の人を支援する人にとっても有効なものになるのではないかと思う。

⚫︎VECTIONが提案しているr/place的なマップ化 やミラーバジェットは、こういうことをもっと公正に、そして選挙のような特別な時期にだけでなく、常に、いつでも投票でき、その推移がリアルタイムでいつでも誰もが見られるようにすることを目指すものだ。オーガナイザーによる運動のオーガナイズではなく、一人一人がそれぞれ勝手にやっていることのマップ化を、自動的に(キュレーターや編集者のような人の「裁量」を経ずに)生成させるような装置があることが重要だと考えている。中心人物に頼らない、単一障害点を作らない。