2024/07/06

⚫︎まったく予想しなかったことなので驚いたのだが、『新宿野戦病院』の小池栄子の英語が酷いという批判があるようなのだ。「えーっ」という声が出てしまった。いやいや、あれこそがこのドラマの核となる、最もクリエイティブでクリティカルな創作物ではないか。
その批判には、ネイティブ英語原理主義とか「正しい」言語主義みたいな、差別的な偏見が潜んでいるようで怖い。そもそも、アメリカは移民の国だし、英語をろくに喋れないアメリカ人などたくさんいるのではないか。
ただし、日本語も英語も(クセの強すぎる)カタコトであるような、小池栄子のあの喋り方は、現実のリアルな反映というより、伝えたいことを、最短距離で、1ターンか2ターンでズバッと伝えるというキャラクターとして作られた(考えられた)結果なのではないかと思う。空気を読んだり、オブラートに包んだりせず、婉曲も遠慮も忖度もなく、立場への配慮もなく、ニュアンスもクソもなく、できるだけ少ない言葉数で、伝えるべきことをだけ直線的に伝える。まさに戦場での軍医の言語として。
小池栄子の喋り方だけでなく、このドラマの多言語的なあり方は、例えば、自分の立場や相手との上下関係をみてから喋り言葉を選ぶというような、日本的・敬語的なあり方への強い批判としてある。