2024-08-03

⚫︎ビクトル・エリセ『エル・スール』をDVDで。この映画を観るのは30年ぶりくらいではないか。本当に素晴らしい。素晴らしいとしか言いようがない。特に何か特別なことがなされているわけではない。良い場面、良い描写が淡々と積み重ねられる。我々はすでに、出来上がった映画を、それも『エル・スール』は素晴らしいということを知って観ているわけだが、これを作っている時のエリセにとって、それは決して自明ではない。うまくいくのか、いかないのか、分からないことを試みている。何より、その時に、これでいけるのだ、これでいいのだ、という確信を持つことができていること、その確信に基づいてことを行うことができていることが、すごいと思うのだ。

(この映画は、実は構想の半分しか実現されず、あるはずの「後半」は資金難で撮影されなかったということを今更知った。いや、かつて知っていたかもしれないが、そうだとしたら忘れていて、改めて知った。こんなにすごい映画が資金難で半分しか実現せず、もっとどうでもいいことに潤沢な資金が使われる。それは特に理不尽なことではなく、この世界のありふれた出来事だ。前半部分だけでも実現したことが素晴らしい。)