2024-10-16

⚫︎多くの人文系、批評系の人が問題にしている資本主義というのは、ハイテクや情報技術産業を含んだいわば高度消費社会としての資本主義だと思うけど、問題なのは、というか、今、世界を覆い、とんでもない格差と理不尽を作り出しているのは金融資本主義であり、肥大化する世界の金融システムだと思うのだが、その内実を教えてくれる本はあまりに少ないし、読んでも難しすぎて(複雑すぎて)わかった気がしない。

(下の画像の本はVECTIONの会議で西川アサキさんに教えてもらった。パラパラッと見ただけだが難しすぎる。)

右翼も左翼も、どちらも大きな国家を必要とする。右翼は、みんなの魂を上位で束ねる共同体としての国家。左翼は、自律した個たちによる中央集権的な相互扶助システムとしての福祉国家。対して、リバタリアンアナーキストは、国家を最小限に抑えたいと考える。リバタリアンは、個の権利(自由)の最大化と自己責任を基礎的ルールとする社会を、アナーキストは、自律した個たちによる、国家とという中枢を介さない分散的な相互扶助(いわば共助)システムのネットワークとしての(多社会的)社会を理想とする。

小さな国家は、二十世紀の中央集権的な共産主義への強い反省(共産主義がどれだけ抑圧的で、どれだけ多くの人を殺したのか)から要請されている。

ぼく個人の趣味としては、アナーキズムに希望を見出したいが、しかし、中央銀行を介さない(あるいは、世界規模の金融システムを介さない)、多数共立する自律分散型の経済圏が本当に持続可能なのかどうかは誰もわからない。ブロックチェーン技術を基盤とした暗号資産の実験が多く行われているが、芳しい成功の例は知らない(とはいえ、ビットコインは破綻することなく持続している)。

(たとえば人工知能のような、莫大な資金と技術の集約が必要である産業が自律分散的経済で可能なのか、たとえば国防や軍事といった大規模な(そして多分に「秘密保持」を必要とする)「秩序・安定を下支えする暴力」の維持・管理が、中枢のない自律分散組織(自律分散的社会群)で可能なのか、など、アナーキズムには解けない課題も多い。)

⚫︎これは、「地下アイドル」の運営の話でもあるし、大手出版社も出版助成金もない世界、一人出版社と独立系書店の経済圏で「作家」が持続可能であるにはどうすればいいのか、みたいな話でもある。

(必ずしも支持していてるわけではないが、本を一冊四万円で売る「一月万冊」のような試みもある。)

⚫︎また、「中央集権の何がいけないか(なぜいけないか)」についても考える必要がある。もし、さまざまに改良しさえすれば中央集権の方がうまくいく、のであればそちらへの「転向」もあり得る。

(中央集権と自律分散の重ね合わせ―緊張を伴った相互抑制―という最も「ありふれた」落とし所もある。)