あついあついあつい

真っ赤なプラスチックの、象さんの絵なんかが描かれている如雨露で、小さな、5、6歳くらいの女の子が、アスファルトの地面に、水で線を引いていた。その線に沿って、ヨーイ、ドン、と、もう一人の女の子と母親らしい人物が揃って走り出し、母親が、僅かの差で一足はやくゴールへ着いた。(その線は、徒競走用のラインだったのだ。)母親は、子供相手に本気で誇らしそうに、まだまだお前なんかに負けない、と、顎を突き出すような格好で言い、子供は、ううぅーっ、と、悔しそうな声をあげる。それにしては結構、イイ勝負で、母親はどうにか、やっと勝ったという感じなのだが。3人とも、平べったい顔に、目、鼻、口が小さくて中心に集まっていて、そっくりだった。やや離れた場所から、その光景を見ながら歩いて来たぼくが、そこの前に差し掛かろうとすると、さあ、もうお終い、家に入るよ、と母親が言って、すぐ脇の庭へと引っ込んだ。ぼくは、残された、道路いっぱいに引かれたクネクネと曲がった線の上を、歩いて抜けて行った。夕方、アトリエへ向かう途中、今日も暑かったけど、湿気はあまりなかった。

アトリエで、窓を明け放して制作している時、今年初めて、ヒグラシの声を聞いた。