●煉瓦敷きの道に沿ってずっと生えているけやきの並木がすっかり赤く染まり、かさかさと乾燥した落ち葉が風に吹かれて流され、吹き溜まりになった場所に山となって積もっている。建物の並び方によって風の通路が決まってしまい、風に流される葉は自然と何カ所かの決まった場所に溜まってしまう。わざとその上を歩いて、乾いた葉がパリパリと音をたてて潰れる感触を足に感じる。建物の入り口の前にある小さな卵型の人工の池の底にも、黄色や赤に染まった葉が沈んでいる。(黄色く染まる葉は、葉のなかの緑の色素が後退することで黄色くなり、赤く染まる葉は、葉のなかで新たに赤い色素が合成されるそうだ。)秋晴れの日の光が、ゆらゆらと揺れる池の水面に反射して、建物の入り口の上の突き出た部分に光の溜まりを映す。ジーッと音がして自動ドアが開くと、外から入ってくる風が室内の空気と混ざる。