●買い物に行くためにゆるやかな坂道を下っていて、忘れていたことをふいに思い出したかのように急に、暑い、と意識する。それまで身体のそれぞれの部位がバラバラに感じていた、あまりにも当然のことなので意識に登らなかった様々なものが、その時にひとつのまとまった方向を持ち、「暑い」という言葉として浮上してきたのだと思う。暑いと意識する以前に、当然のように身体が感じている暑さがずっと持続するこの感じを、つまりこの夏という季節を、ぼくは決して嫌いではないのだった。スーパーに着いて、自働ドアが開いた瞬間に、(暑さだけでなく湿気も含めて)空気がガラッと変わる感じも、冷房が効き過ぎていない限り、とても良いのだった。