●必要があって、ヴィスコンティの『ベニスに死す』をDVDで観た。もしかすると、高校生くらいの頃にテレビで観て以来かもしれない。とにかく、劇場でちゃんと観た記憶がない。ちょっと驚く程陳腐な話(トーマス・マンの原作はどうなのか知らないけど)なのだが、さすがの画面の豪華さで、最後まで「目」がずっと惹きつけられていた。
少年役の男の子は確かに美しいけど、とちらかというとかわいいという感じで、ちょっと安いアイドルみたいで、悪魔的なところが全然ないのが意外だった。中年の音楽家は、少年(という他者)によって破滅させられるというよりも、自滅するという感じで、それも、とても安らかに、うっとりと美少年を眺めながら(自ら望んで)滅びてゆく感じだ。(基本的に、中年の音楽家の一人称の話で、他者がないというか、非常に自己愛的で、松浦寿輝を思わせる。)もっと、こってりした映画かと思っていたけど、案外あっさりしていて、さらさら流れるように最後までゆくのだった。