●『悦楽共犯者』(シュヴァンクマイエル)をビデオで。傑作とかいうものではないけど、面白かった。笑えるし。「共犯者」というタイトルとは異なり、ここに出て来る人物は皆、自身の快楽のための装置を、一人でこっそりと制作し、こっそりと一人でそれを使用する。(唯一、郵便配達の女性のみが、自らの快楽を目指すのではなく、一人一人の孤独な快楽を細い線で結ぼうとするのだが。)その快楽の装置自体は、わりとありふれていてなんということもないのだが(だから傑作とは言えないのだが)、装置をつくる具体的な過程を丁寧に見せているところが、一体どんなものが出来るのかと期待させて面白い。一番笑えたのは、奥さんをベッドに一人残して、納屋のようなところにこもって熱心に作業するおっさんで、このおっさんは登場人物中最も熱心に何かをつくっていて、一体どんなに凄い装置をつくっているのかと思えば、出来た物は、あんなに熱心につくってこれかよ!、と拍子抜けするような情けない代物で、しかしそれが、でもまあ結局そういうことだよなあと、笑えるのだった。(まあ、『アリス』のような作品を徹底して作り込んでつくっている自分自身を外側からシニカルに捉え直したような作品といえば、それまでなのだけど。ただ、この作品が「笑える」のは、耽美にはしらず、かといって、ただシニカルなだけでもなく、その微妙な感じが維持されているからなのだと思う。あと、「つくる」過程の描写がリアルで、つくるってこういうことなんだよなあ、という説得力がある。)
ただ、シュヴァンクマイエルの長編はどれもそうなのだけど(『アリス』はそうでもないけど)、導入部分がすごくつまらない。『悦楽共犯者』も、最初のつまらなさがもう少しつづいていたら、ビデオを止めて、観るのをやめてしまっただろう。最初のネタいらないだろうと思う。『オテサーネク』は、最初の三十分くらい観て面白くないのでやめてしまったのだが、もう少し我慢して観てれば面白くなったのかもしれない。
●夜中にテレビをつけたら、清水ミチコの芸歴二十周年番組みたいなのをやっていて、だらだら観ていた。ぼくは、おそらくこの人のテレビデビューの「冗談画報」という番組をリアルタイムで観ていて、面白いと思って途中からビデオに録画して、そのビデオを何人かの友人にも見ろと言って貸したおぼえもある。(「冗談画報」は新人発掘の深夜番組なのだが、割とそれからすぐに評判になって、あまり時間を置かずに「徹子の部屋」とかに出ていたという記憶がある。とはいえ、ぼくは割とそれっきりで、その後特にファンになったわけではないのだけど。)その時に、確か山口百恵の「ジプシー」という曲にのせて(ものマネで)山手線の駅名を順番にすべて歌うという、特に面白くもないネタがあったのだが、ぼくは何故かそれを観ていて山手線の駅名をその時に全部憶えてしまった。(その時はまだ実家にいたので山手線に乗ることなどほとんどなかった。)だから今でも、例えば渋谷から駒込まで行くのにどれくらいの数の駅を通過するのかとか考える時、頭のなかでいちいちその曲のメロディにのせて、渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場....、と出て来るのだった。メロディがすごく鬱陶しいのだけど。