●十二月は波乱の月で、今月にはいったとたん、心安らかではいられないようなことが、いくつか続けて起きた。とはいえ、これはいきなり降って湧いたように起こったことではなくて、その前数ヶ月から潜在的に進行していたものだったり、その時期の自分の行動のツケとして起こったことなのだが(しかしそういうことは先取り的には予測できず、事後になってからしか分からない)。このような自分の身の回りのことが、世の中の経済的な動向と変にシンクロしていたりするのも、ちょっと気持ち悪い。ぼくは基本的に(作品経験は別だけど)、日常的には、感情が低値安定(アタラクシア!)で保たれることばかりを望んで生きているので(ということはつまり、自分の感情の安定走行に自信がないということでもあるので)、こういう揺さぶりやプレッシャーに弱いのだが、もういい歳したおっさんなんだからしっかり対応しなくてはと思う。
●だからということでもなく、この時期になると毎年、ついつい立ち読みしてしまうのが細木数子六星占術の本で、二十歳くらいの時に付き合っていた女の子から教えてもらって以来ずっと、年末になると(年末だけだけど)バカみたいだと思いつつもちょっとだけ気になってチラ見してしまう(何故、細木数子なのかという理由は、たんに他の人を知らないってことだし、テレビの細木数子はほとんど観たことないし興味もないのだが)。六星占術によるとぼくは火星人(−)で、霊合星人ということになる。霊合星人というのは、自分の星とは真逆の位置にある星の力に、例外的に強く影響されてしまう人ということらしい(数奇な運命をたどり、志半ばで早死にする人も多いということなのだが、霊合星という概念は、その人が属している星が十二年に一度めぐってくる「停止」という年に生まれた人ということらしいから、つまり確率的には十二人に一人は「霊合星人」なので、別に珍しいというわけではない、あなたは未年生まれだ、とか、あなたは双子座だ、というのとかわらない)。
で、それによると、来年は、メインの星としては十二年周期で最も良い年なのだけど、ということはつまり、真逆のサブの星では十二年で最悪の年ということなので、プラスマイナスゼロというだけでなく、著しくバランスを欠いた、不安定な乱高下する年になるだろうということだった。そういうのが一番苦手なのだが。
●あなたは何星人で、来年の運勢(細木数子は「運命」という強い言葉を使うのだが)はこうこうです、というのは、アルゴリズムによって自動的に算出されるのだが、それを社会のなかで(対人的に)機能させ運用し信用させるのは占い師によるパフォーマンスやそのカリスマにかかっているわけで、このパフォーマンスのレベルで、細木数子はますます、どぎついというか、下品な感じになっているように、チラッと立ち読みしただけだけど感じた(ある種のいかがわしさは占いの対人的パフォーマンスには必須だとしても)。物語的プレゼンテーションや感情の誘導の仕方が、ちょっと極端過ぎるというか、脅迫的というのか。二十年前はこれほどじゃなかった気がする。(ぼくは、自動的に算出される運気の流れ-世界の法則の方が気になるのであって、あなたはこういう人ですという自己像の提示とか、話を聞いてくれるカリスマおばちゃんのありがたいお説教とかを欲しているのではないのだな、と思った。)
●原稿はなんとか書けたが、それで力尽きて、淡々とこなすしかない用事の仕上げは明日に持ち越し。