●雨のなか散歩。川原はむせるほどに濃い緑。土手から、中学の体育館と校舎に挟まれた渡り廊下のような場所が見下ろせる。学生が集まって、何かを作っていた。釘を打つ音。垂木と垂木がぶつかる音。音や湿気がこもる場所。作業をしているのは二人くらいで、数人が、やや下がったところに立って、それを手持ちぶさたにぼんやり見ている。三、四人の女の子が、さらに二、三メートル離れた段差に腰を掛けて、作業を見ているでも、見ていないでもない感じで、ハンカチで顔を扇いだりしている。作業している二人もだらだらやっている。作業の行き先も、完成のビジョンもなく、ただ作業している感じ。この時間がいつまでつづくのかとうんざりし、集中してやってさっさと終わらせるとか、作業そのものをきっぱりやめてしまうとかした方がいいと、おそらくその場にいるみんなが思っているのに、誰もそれを言い出さないで、でも実はその時間をそんなに悪くは思っていない。むしろこのままずっと、このような無気力でだらっとした時間のなかにいたいとさえ感じている。というか、この時間のなかからわざわざ這い出そうとする、その意志の起動がかったるい。若い時って、なんかこう意味もなく「だるい」んだよなあということを、体感として思い出した。夏休みなんだなあと思った。
●ずっと書きたいと思っていてなかなか書き出せなかった中上健次「岬」論の書き出しをちょっとだけ書き出すことが出来た(昨日一日かけて鬼のように熟読して無理矢理滑り出した、でもこの感じも、二、三日もすると忘れちゃうんだけど)。一週間くらい、これを集中的にやってみようと思う。ぼくには「岬」はホラーとしてしか読めない、というのは半分冗談だけど、半分は本気。