●『ツイン・ピークス: リミテッド・イベント・シリーズ』の一話と二話を観た。懐かしのテレビシリーズのリバイバルなどではなく、『インランド・エンパイア』以降のデヴィッド・リンチのガチの新作という気配が濃厚にあってうれしかった。
濃厚とはいっても、凝縮というのとは逆の方向にいっている。シーンやカットにおける「時間的フレーム」という概念が溶けてしまっているような、独自の緩慢なリズムで、一話一時間のドラマなのだけど、話の展開的には一話で二十分くらいの感じであっさり終る。この緩慢な速度感が、(音響も含めた)リンチ的イメージに新たなテクスチャーを生んでいるように思う。
インランド・エンパイア』では、劇場で上映するという形態だから、三時間という枠のなかに様々なイメージをぎゅっと詰め込んでいる感じだけど、テレビドラマだとその必要がなく、個々のイメージ、個々の場面が、十分に時間を与えられて、間をたっぷりあけてゆったり並んでいる感じ。イメージやテクスチャーの異様さと、それらがのんびりと進行している感じとが同居している。リンチの特徴の一つである、切迫と急激な緊張の高まりという感じはあまりなくて、切迫や緊張や硬直という感情のテクスチャーが間延びによって変質しているというか、伸びてしまった磁気テープによって再生される音の奇妙な質感のような面白さがある。この緩慢さが生み出す感じがとても面白い。
展開の自由度も前より増している。
以前の『ツイン・ピークス』シリーズだと、物語や展開が不条理ではあっても、場面、場面の演出は割合と普通であるところも多かったから、脚本がしっかりとしていて、かつ、全体のトーンを示すリンチによる第一話(パイロット版)があれば、他の監督が演出してもトーンの統一性を保つことが可能だったのだろうが、「リミテッド・イベント・シリーズ」のこの感じは、おそらく他の監督ではトーンの統一は維持できないだろうから、すべて回をリンチ自身が演出するしかなかったのだろう。というか、やりたかったのだろう。
なんというのか、とても楽しい。これがまだあと16話分観られるのはうれしい。
●本にするための連載の改稿が、ようやく本格的に動きはじめてくれたみたいだ。この感じを維持したい。