●「岬」論のつづきを書く。中上健次のテキストはひたすら厳密だと感じられる。きわめて複雑で、錯綜しているのだが、そこにあるのは、自分自身の組成に対する、律儀とも息苦しいとも、時に退屈だとさえ感じられるほどの厳密さであるように思う。厳密であり正確であるように思われるそのテキストには、だから熱さや過剰さや逸脱というものはあまりなく、その密度に押されて読み間違うことがなければ、意外にあっさりしており、きれいに構造へと還元されるはず。しかしなされるべきなのは、構造の解析ではなく、その厳密な組成を生み出している力の源泉の解析であり、その力の在処を正確に感じとることであろう。
●冗長だったり、しつこかったりするところは、後から削ることが出来る。でも、踏むべき段取りを途中で端折ってしまったところを、後から埋めることはできない。進むべき細い線を、踏み外さないように気をつける。
多分、明日からかなりハードなところに入ってゆく。