●昨日の『建築と日常』の打ち上げの帰りの中央線のモニターで、森田芳光が亡くなったというニュースを観て驚いた。現在の時点で映画作家としての森田芳光にはまったく興味はないけど、十代の中頃のアートにかぶれたガキだったぼくには『の・ようなもの』『家族ゲーム』『ときめきに死す』などはとても新鮮にうつった。『シブがき隊 ボーイズ&ガールズ』とかもけっこう好きだった。
高校の時、確か映研や演劇部の有志がやっていた放課後の上映会のようなものがあった。上映会といっても、どこか適当に空いている教室を探し、誰かが持ち込んだ(ゴミ捨て場から拾ってきたみたいな)ボロボロの赤い小型テレビのまわりを四、五人が取り囲んで、レンタルビデオをダビングした粗い画質の映画を観るというようなもの。テレビは、それを抱えて空き教室を探せるくらいの大きさだった。ぼくは、ロメロの『ゾンビ』もカーペンターの『遊星からの物体X』も、その赤くて小っちゃいテレビではじめて観た。
ある日その上映会で、同じ日に『家族ゲーム』と『うる星やつら2ビューティフルドリーマー』の二本をいっぺんに観た。その時の驚きというかショックのような感覚は忘れられない。『家族ゲーム』に対して、映研のシネフィルの先輩が「あんなのは邪道だ」と言うのに軽い反発をかんじたことも憶えている(ロメロやカーペンターを教えてくれたのはその先輩だ)。ぼくにとって森田芳光という名前は、映画作品そのものによってというよりも、高校の時の赤くて小っちゃいテレビや、数人でそれを取り囲んで観た時の記憶と結びついているという意味で、重要な名前なのだった。