●去年、「セザンヌの犬」という短い小説を書いたのだけど、それ以来ずっと、犬というか、イヌ科の動物がなんとなく気になっている。「セザンヌの犬」には、犬と人とのかかわりがライトモチーフのように繰り返し現れるのだけど、書く前は、そんなに犬が全面に出てくることになるとは予想もしていなかった。何の気なしに、子供と柴犬が庭先で遊んでいる(こともある)ということを風景の描写の一部として書き込んだのだけど、そうしたら、その後、それがどんどん増殖していってしまったのだった。
昨日の日記に書いた『狼の群れと暮らした男』という本も、そのような犬(イヌ科)への関心(というか、漂う程度の愛着のような感情)がきっかけとなって手に取った。本屋をぶらついていて、二匹のオオカミの写真が表紙になっている本がふと目に入って、ふらふらと引きつけられてしまった。そのオオカミの写真から見られていたかのように。で、読んでみると、「セザンヌの犬」という小説は(特に終盤の、マーくんが山のなかで過ごす場面は)、この本からの影響を受けて書いたとしか、自分でも思えなくなってしまった。もちろん、書いている時にはこの本の存在すら知らなかった(まだ出ていなかったし)のだけど。ただ、時間が前にだけ進むとは限らないとすれば、この本から前もって影響されていた、という風にも考えられる。