西荻窪のbeco cafeで磯崎さんとトーク。久しぶりに中央線に乗ったので、土日は中央線が西荻にはとまらないことを忘れていた。磯崎さんは、てっぺんがとんがっている不思議な形の帽子をかぶっていた。「娘に小人みたいだねって言われた」と。
ぼくにとって言いたいことを「話す」ことで表現するのはとても難しくて、トークの後はいつも、言い足りない感と言うか、言いそびれた感(喋りながら、言いたいことと言っていることとがずれている感じがある)が残るのだけど、でも、自分が「言いたい」と思っていることとは別のことがたぶん出ちゃっていて、いきなりぱっと背中を押されて、はっとしてとってしまう仕草みたいなことが、実は「言いたいこと」よりも重要だったりするのかもしれないので、これからも、苦手ながらも機会があればやっていきたい。今回は、相手が磯崎さんだったこともあり、場所の小ささもちょうどいい感じで、例えば沈黙がしばらくつづいてしまっても、急いで何かを喋って埋めないといけないみたいなプレッシャーも少なく、リラックスした感じだった。質疑応答とかも、質問に答えるというより、客席にいる人と普通に話している感じにできたのではないだろうか。
●このトークは、ぼくの書いた「セザンヌの犬」がbeco cafeの店長とスタッフが選ぶ年間ベスト作品に選ばれたことによるものなのだけど、ここに(自慢として)beco cafeによる2012年の年間ベスト5を書いておく。地味に発表されて特に反響もなかった(単行本にすらなっていない)短編小説にこんな過分な「位置」を与えてもらい、光をあててもらえてとてもうれしい。
一位、「せザンヌの犬」(古谷利裕)
二位、「ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ 」(金井美恵子)
三位、「恥辱」(クッツェー)
四位、「トーニオ・クレーガー」(トーマス・マン)
五位、「カフカ式練習帳」(保坂和志)