●「群像」に載っている野間文芸賞の受賞対談(保坂和志高橋源一郎)で保坂さんが、「読解力なんていうのは奴隷の精神なんだ」というようなことを言っていて、おおーっ、と思った。保坂さんは時々本当にすごいことを言う。無造作な手つきで重要なものを荒っぽくいきなり指さす、という感じ。これはなんというか、呪いや憑き物のようなものを落とす強力な言葉(呪文)となり得るのではないかと思った。
≪保坂 さっき話したラジオに出たとき言ったことだけど、日本がOECDのテストで読解力が一位になったじゃないですか。
高橋 一番読めるということ?
保坂 そう。読解力一位なんて、それは奴隷の精神なんだと。読解力の根性で『未明の闘争』を読もうとすると難解きわまりなくなる。読解力を放棄するための練習。(…)≫(「群像」2014年1月号)