●ヨーロッパの小国は過激で(露骨で)ほんとに面白い(ヤバい)。
タックスヘイブンであり、国民一人当たりGDPが世界一位で、宇宙関連事業に国の将来をかけるルクセンブルク。核融合炉の燃料となるヘリウム3は、地球上ではレアな鉱物だけど、月には比較的たくさん埋蔵されているという。グーグルが核融合炉の研究をはじめた以上、そこ(宇宙、月)には巨大な利権が発生すると予想され、今後、月や小惑星にある鉱物資源の権利をめぐる国際間での抗争が激しくなるのではないかと思われる。そこでまず先手をうっておこう、と。きわめてきな臭い。
「ルクセンブルクが「小惑星資源の権利」を企業に与える新法制定、「宇宙のサプライチェーン」を支配できるか」(WIRED)
https://wired.jp/2017/08/24/luxembourgs-new-law/
《宇宙関連法という点では、ルクセンブルクは米国に数年の遅れをとっている。米国の宇宙法では、宇宙資源を商業的に獲得した国民には「その権利が与えられ(中略)、所有、占有、移動、使用、販売の権利を有するものとする」とされている。Planetary ResourcesやDeep Space Industriesに加え、宇宙用住居を製作するBigelow Aerospaceも、この法律を後押しするロビー活動を行っていた。》
《1967年に発効した国連の宇宙条約によると、宇宙資源の権利は法的には誰にも与えられない可能性がある。この条約の第2条には、「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない」とある。》
《ルクセンブルクの考案した法律と米国の2015年宇宙法は、条約の抜け穴を突くものだ。どちらの宇宙法でも、基本的には、「企業は小惑星の領有権を主張しているのではなく、単に掘り出した鉱物の権利を主張しているだけである」とされている。つまり、全体を占有しているのではなく、切り落とした四肢を占有しているにすぎない、というわけだ。》
《これは複雑な問題だ。おそらく国連の条約は、国家にのみ適用されるもので、個々人に適用されるものではないだろう。さらにこの条約には、「あらゆる天体に自由に立ち入ることができ」、宇宙は「すべての国がいかなる種類の差別もなく、自由に探査できるものである」とも書かれている。それならば、小惑星の採掘を禁止するのは、そうした自由を制限することになるのではないだろうか? しかも、この条約の条文が書かれたのは、民間宇宙会社はもちろん、宇宙採掘でさえSFにすぎなかった時代だ。》
《それでもルクセンブルクと米国は、この古い条約が採掘を禁止するものと解釈され、宇宙資源開発の未来に立ちはだかることはないと確信している。したがって8月1日以降は、あなたがルクセンブルクから小惑星採掘の許可を得たのなら、そこから生まれる富はあなたのものだ。》
●一方、常にロシアの脅威にさらされている小国エストニアは、おそらく、究極的には、領土の存在しない、人々が世界中に散らばりながらも、同時にエストニアの政府と法の庇護のもとにあり、エストニア国民としてのアイデンティティをもちつづけられるような、完全クラウド型仮想国家、分散サーバによる「どこにもない政府」を目指しているのではないだろうか。「世界最先端のクラウド国家---エストニアの驚くべきデジタル戦略」(SEO Japan)2014年の記事だけど。
http://www.seojapan.com/blog/digital-estonia
《さらに面白いのは、エストニアが完全にデジタル化されたことで生まれた裏の側面である。エストニアの政府機関のクラウド化が100%完了すれば、この国への物理的な攻撃のコストは高くなる。このスカンジナビアの小さな国を侵攻したものの、政府の業務は中断されず、データのレプリカが、その他の友好的なヨーロッパの区域で起動する展開を想像してもらいたい。民主主義の政権が、すぐに再選挙によって生まれ、重要な決定が下され、文書が発行され、企業 & 不動産の記録は管理され、出生の記録が行われ、さらには、インターネットにアクセスする住民によって、税金が循環するのだ。遠い未来の話をしているように思えるかもしれないが、これは、エストニア政府のCIO、ターヴィ・コトゥカ氏が理想として掲げるだけでなく、同国が既に構築したe基礎に実際に実装しているシステムである。》
《しかし、当然ながら、何もかもデジタル化すると、個人だけでなく、システム全体、そして、国全体にセキュリティのリスクをもたらす可能性がある。事実、エストニアは、2007年のサイバー戦争の標的となり、政府、メディア、そして、金融機関をターゲットにした暴動が起きた後、組織的なボットネット攻撃が行われた。その結果、数時間にわたって、エストニア全体が、事実上、インターネットから寸断されてしまった。しかし、その結果、エストニアは、NATOのサイバーディフェンスセンターの本拠地となり、エストニアのトーマス・イルヴェス大統領は、世界の国々の指導者の中で、サイバーセキュリティを推奨する指導者として有名になった。》
●「ブロックチェーンは国家を超越するか---Bitnationとエストニアから見る未来国家」(Blockchain Business Community)
http://businessblockchain.org/blockchain-can-change-system-of-the-country
《現在、エストニアにおける多くの電子サービスはX-Roadというクラウドサービス上に構築されています。しかしクラウドサービスでの個人情報の管理にかかるセキュリティコストや、アクセスログの確認など個人情報の自己コントロールなどの観点から、記録の改ざんが困難なブロックチェーンの活用は非常に適していると言えるでしょう。》
《このようにエストニアが物理的な「領土」から「人」や「データ」へとその重心を移しつつある背景には、「国にとって必要なのは領土ではなく人である」という考えがあると言えるでしょう。将来的には、領土がなくなってもブロックチェーンを通じて世界各地から分散的に行政サービスを実行し、自治を続けながら国家が存続していくという形も十分に考えられうるものです。》