●そろそろ『メッセージ』のレンタルや配信がはじまりそうなので、原作である「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)を読み返してみた。
この話キモは、一見むつかしい言語学や数学や物理の話が出てきそうな雰囲気はあっても、実はそんなに難しい話にはならないというところにあるのかも。古典論の範疇にある限りでのフェルマーの最小時間の原理を、ふわっとした比喩として使っているので、イーガンのようにガチで難しい話にならなくて助かる(そこが、イーガンとちがって「上手い」ところなのだろうが、ハードなSFを頭をひねりながら必死で読んだという手ごたえはない)。それと、この小説には一種の叙述トリックが仕掛けてあって、主人公の女性科学者の年齢がよく分からないというところにミソがあるのだけど、映画だと人が映っちゃうから、そこはどう処理するのだろうか。また、「あなた」という二人称を映画でどうやって効かせるのか。
●『団地』(阪本順治)をDVDで。うーん、ひねった人情話としてとても面白いんだけど、観終った時点での感想としてはイマイチ。それはおそらく、ラストに納得がいかないからだと思う。これじゃあ、この物語が終わっていないというか、せっかく面白いのに、こんな尻切れトンボではもったいないというか。亡くなった息子のことをどう決着つけるのか、または、決して決着などつかないのか、そういうことがまったく示されないまま誤魔化されたように終わってしまって、「ここで終わりはないでしょう」と思った。
(一見、きれいに終わっているようにもみえるけど、「きれいな終わり」を無理やりくっつけたように感じてしまった。)
それと、「宇宙人」の存在の仕方が、最初の方はとても面白いのに、終盤にいくにしたがって常識的というか、紋切り型に近づいてしまう。