●アマゾンで本を探しているときに、「涼宮ハルヒの直感」というタイトルが出てきて、まさかと思ったが、クリックして、2020年にハルヒ・シリーズの新作が出ていたことを知った。
この「直感」の前が2011年の「驚愕」で、さらに一つ前が2007年の「分裂」なのだが、この「分裂」と「驚愕」はお話としては続いていて、だがぼくは「分裂」の途中までしか読んでいない(まあ、面白くなかったからなのだが、一応、「驚愕」を買ってはあるはず)。「分裂」と「驚愕」の間が四年あいているのだが、さらに「驚愕」と「直感」の間は九年もあいている。
もはや、ハルヒ・シリーズに刺激的な面白さは期待しないが、キャラも設定も面白いので、サザエさんのようにしてゆるく続いていくのは、まあ、よいのではないか、と思ったら、あらすじを見ると、なんとハルヒが高校二年生に進級しているようなのだ。2003年(「涼宮ハルヒの憂鬱」出版年)から2020年まで、現実の時間で十七年かけて、高校一年生から二年生になる。これこそが「小説の時間」ではないかと、少し心が動かされた。作者の「サザエさんにはしない」という強い気概を感じた。
(その気概によって、書けなくなってしまったのかもしれないが…)
これで思い出すのが「桃尻娘」で、1978年(「桃尻娘」出版年)に、「桃尻娘」の最終話で高校三年生だった榊原玲奈は、1984年(「帰ってきた桃尻娘」出版年)に、一浪して早稲田大学に合格する。ここではズレは四年程度だが、1988年(「無花果少年と桃尻娘」出版年)になってもまだ、同じ年で、大学一年目の秋くらいだ。つまり、榊原玲奈は、現実の時間で十年かけて、三つだけ歳をとる。「桃尻娘」出版時に榊原玲奈と同年齢だった読者は、このときにはもう三十歳近くになっている。
こういうのって、リアル「ほしのこえ」だなあと思う。
とはいえ「桃尻娘」シリーズでは、最終巻の「雨の温州蜜柑姫」(1990年出版)で登場人物たちも三十歳になるので、ここで現実に追い付くことになるのだが。