駅前の自動車修理工場の解体は、ほとんど終わり、二台の巨大なショベルカー(正確には何というのか知らないが、ショベルカーのアームの先が大きなペンチのようになっているもの)が向かい合って、瓦礫をさらに小さく砕いている。かなり道路に近い場所で作業しているので、ショベルカーを間近に見ることができた。埃を被ってしまうほどの近さ。向かい合って大きな音をたてながらアームを動かしている二台のショベルカーを見ていると、まるで肉食の恐竜が、一つの獲物を分け合って喰らいついて噛み砕いているようだ。アームの角度が微妙に変わるたび、その接続部分が軋んで、キリキリとかん高い音をたてる。
信号待ちのとき振り返って見ていたのだけど、何度かの青信号をやりすごして、しばらく立ち止っていた。重たくて大きなものが動くときの、負荷の大きさ、というのは、それだけで見ていて面白い。重たくて大きなものの魅惑。動くたびにキリキリと軋む。
夕方、移動中に電車のなかで耳についた、高校生くらいの女の子の話。
『あんな、あたしな、ぬるぬるした季節好きやねん、なんかな、幽霊でるぞー、みたいなな、花粉とんでるぞー、みたいなな、空気ぼわーんとしててな、淀んでるぞー、みたいなな、濁ってるぞー、みたいなな、そんなん、ええねん。』
「 ぬるぬるした 」というのは、関西では、あたたかい、という意味なんだろうか。でも、いきなり聞くと、ヌルヌルした季節、って・・・、と思ってしまう。
解体現場にもどってくると、ショベルカーが3台になっていた。夕暮れに吠える恐竜たちを、しばらく眺めている。