風がとても冷たい。一時、空の色が春に向かうような、ややぼけた感じの青になっていたのだけど、ここのところの寒さで、また、冬らしい厳しく濃い青になった。ビルのガラス面に映っている空の青は、実際の空よりも濃く青く見える。
昨日、東京地方には、大雪警報が出ていたらしいのだけど、実際に雪が降ったのはごく一部の地域だけだったそうだ。この辺りは、その「 ごく一部の地域 」だったという訳だ。
歩いていたら、突風で落ち葉が急激に舞い上がり、それが今度はゆっくりとスローモーションのような速度で、ひらひらと目の前に落ちた。風で木の葉が擦れる音がざわざわと大きく鳴っていて、工事現場の騒音に負けないくらいに、耳につく。
工事は相変わらずあちこちで行われている。駅近くの、自動車修理工場跡は、ほぼ完璧に更地になり、ここには12階建てのマンションが建つそうだ。乗り換え駅の周辺の再開発も、急ピッチで進められている様子。コンクリート・ミキサー車が、ずらっと並んでいる。普段利用している駅の幾つかは、ホームの拡張工事だとか、エスカレーターの設置工事だとか、トイレの改装工事だとかで、ガンガン音が鳴り、せわしなく黄色いヘルメットの男たちが行き来しているし、ホームも狭くなって、通行も滞りがち。緑地の近くの広大な平地には、巨大なショッピング・モールの建築中で、背の高い高いクレーンが、何台も林立している。クレーンの語源は、クレイン(鶴)だそうだ。
幼稚園の送迎バスが着くところに、母親と小さな子供が二人で待っている。子供は、大人の着るジャケットなのだろうか、白い、引きずってしまいそうなほどに丈の長い上着を着せられている。午後からは、薄くて軽そうな雲が、空全体を覆って、光を遮断し、午前中よりもいっそう寒さが増している。
近くに住む金色の髪のハーフの子供が、黄色い、フード付きの暖かそうなオーヴァー・コート(裏地の紺色がちらちらのぞく)を着て、手に、スーパーやコンビニのビニール袋を握りしめて、坂道を走って下ってくる。タッタッタッタッ、という足音と、ビニール袋がゆれるジャラジャラした音。黄土色の、乾燥しきって、手で軽く握るだけでバリバリ砕けてしまいそうな枯れたすすきの葉が、風でガサガサ鳴る。
太陽の光を透かして白く輝く薄い雲を背景にして、空へ向かってすくっと伸びているいちょうの木の、ごつごつとしたシルエット。
夕方になって、雲がかすかに割れ、雲間から光が射して、地面に長い長い影をつくる。夕方のオレンジ色の光と、影。
夕焼け。日没まぎわの光が、雲に反射して、雲が、派手な蛍光ピンクに輝いている。薄明るい紺色になった空に、ヘリコプターが一台ゆっくりと通過する。音が、遅れてやってくる。
夜遅く、おそろしく寒いなかで、自転車をこぐ。思いっきり力を込めてこぎ続けると、身体の内側は熱くなってくるけど、表面の熱は、どんどん奪われてゆく。激しい温度差。