●『スウィング・ガールズ』(矢口史靖)をDVDで。上野樹里が出ているので観たのだが、驚くくらいにつまらなかった。この監督はひたすら説明ばかりしていて、物語を説明し、ギャグを説明し、そしてそれ以上のことをなにもしていない。説明することがつまらないのではなく、はじめから説明以上のことをする気が全くないとしか思えないところがつまらない。だから、コメディとしては致命的だと思える程リズムが悪いし(百分ちょっとの映画なのに、とても長く感じられる)、超低予算の映画だというわけではないはずなのに画面がすごく貧弱だ。(ただ、一連の雪景色のシーンだけは、ちょっとだけ「説明以上」のものを感じた。まあそれも、夏から冬にかけての時間の推移を、ちゃんとそれだけ時間をかけて撮影している、という程度のことなのだが。)上野樹里は、映画のはじめの方はあまり冴えたところもなかったのだが、物語が進行するに従って、だんだんと「暖まってくる」という感じで、その才能を発揮し始めていて、そこだけが見所かもしれない。
(最初は補習をさぼるのが目的で嫌々やっていた吹奏楽部への「協力」が、そのうち楽しくなってようやくやる気になってきはじめたところで、腹痛でダウンしていた吹奏楽部員たちが復活してきて、お前らもういらないよ、みたいな感じになった後、女の子たちが集団で道を歩きながら泣き出すショットがあって、冒頭からいいところがひとつもなかったこの映画ではじめてちょっといい感じだと思ったのだけど、そこに近所のおばあさんみたいな人を通りかからせて、「どうした、先生が死んだのか」みたいな台詞を言わせて、その場面を中途半端なギャグみたいなので落とそうとするのを観て、ああ、この映画は決定的にダメなんだな、と思った。)