●とりあえず「geography」と呼ぶことにした、新しい傾向の作品がアトリエのなかに少しずつ増殖してきていて、ドキドキする。アトリエに違う空気が生まれつつある。あたらしいと言っても、けっきょくキャンバスに油絵の具で描いてるわけだし、今までと全然違うことをやっているというわけではないが、ぼくとしては、今までになかった何かがそこでは掴まれていると感じている(この感じが幻影や勘違いかもしれないという不安は勿論常にあるのだが)。絵画としてはまだまだ弱いようにも思えるが、しかし、まだ中途半端に絵画であろうとしすぎているということかも知れない。自分が既に知っているやり方で、性急に作品を充実させようとするのではなく(わかりやすい結果を急ぐことなく)、自分が掴もうとしているものが何なのか、あるいは、「この絵」が進もうとしている先はどこなのかを探りながら、ゆっくりとすすんでゆくようにしなければ。弱いことにちゃんと耐え、ここにあるものにふみとどまること。(どうせ「見栄えのよい作品」をつくったって売れないんだし、幸か不幸か誰からも「売れる」ことを期待されてもいないんだし。)
なんとかして生き続けることが出来れば、まだあと四十年くらいは絵が描けるはず(時間の猶予が残されているはず)だから、ここで焦る必要は全然ない。世の中の時間の流れや「現在」に惑わされてはいけない。