●『六月の蛇』(塚本晋也)をDVDで。『鉄男』がちょっと面白かったので観てみたのだが、ぼくにはこれはあまり面白いとは思えなかった。
こちら側というか、表側の世界にカップルの生活があって、それに対して裏側というか、どこか(距離や関係が定かではない)遠くから遠隔操作するみたいにこちら側に影響を与えてくる誰かの存在があって、それによってカップルの生活が(身体的なものも含めて)変容を強いられること。その遠くの向こう側に存在する誰かを監督自身が演じていること。そして、最初は遠くからの気配としてしか分からなかったこちら側と向こう側との因果関係や人物が次第に明確になってきて、徐々に向こう側の人物がこちら側の世界(同一の空間)にも侵入してくること。というような基本的な構図は、『鉄男』とまったく同じなんだな、と思った。
とはいえ、『鉄男』ではリアルだった「遠い」向こう側の感触は、ストーキングとか盗撮とかいう、「物語」として分かり易い(そして映画としてありふれた)形象を持つことによってつまらないものになってしまっているように感じた。『鉄男』では向こうからこちらへと「鉄の呪い」とでも言うべきものが伝播してくるのだが、『六月の蛇』では「がん」が伝播する。がんというのはこれもまた、物語としてあまりに安易な形象ではないだろうか。『鉄男』の後半でもちょっと思ったのだが、中途半端に物語に譲歩してしまっている気がした。
頻出する、円形のものや水というモチーフも、美的というか装飾的という範疇に留まり、こうでなくてはならないという形で、作品の構造にまで食い込んでいるようなものではないように感じられた。
でも、塚本晋也の声はすごくいいと思った。この声がなければ、この映画は成り立たないというくらいに。あと、塚本晋也はやはり、すごく「ちんこ」のイメージが好きなのだなとも思った。
●それはそうと、『エアベンダー』はどうなんだろうか。テレビのスポットを観る限りでは、「こんな映画が面白いはずがない、ぜったいつまんねー」という確信が日々強くなるばかりなのだが、しかし、シャマランがそう簡単につまらない映画をつくるはずがないという思いもあり、とはいえ、映画館まで観に行きたいという気持ちにまでなかなかなれないでいる(嫌な予感の方が当たってしまうんじゃないかという予感が強くある)のだった。とても気になるのだが、気が重い、というような感じ。