●お知らせ。「ユリイカ」10月号(特集・安倍吉俊)の、『乱暴と待機』(本谷有希子/冨永昌敬)小特集で映画版についての小論を書いています。タイトルは「回帰と反復」。
(http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B0%C2%C7%DC%B5%C8%BD%D3)
この映画は小池栄子の映画と言っていいんじゃないかと思うくらいに小池栄子が素晴らしいのだが、しかし、小池栄子のような俳優(あるいは彼女が演じた「あずさ」というキャラクター)は、いままでの冨永監督の映画には見られなかった感じなので(ぶっちゃけ、冨永監督の「好み」とは思えないので)、きっと、そこのところは原作に従って、原作に忠実に造形(演出)されているのだろうと思っていた。しかし「ユリイカ」に載っていた本谷インタビューをみると、もともとは奈々瀬(美波)と山根(浅野忠信)というカップルの側が中心の話なのに、映画を観るとあずさ(小池栄子)と番上(山田孝之)というカップルの方にウェイトが移ってしまっているようにみえる、とか言っていた。つまり、本谷有希子的にも、「あずさ」はそれほど突出したキャラクターではなかったということか。
だとすると、この映画での小池栄子の素晴らしさは、冨永昌敬の力でも、本谷有希子の力でもなく、つまり、小池栄子自身の力であり、小池栄子が素晴らしい俳優なのだ、ということになる。この映画が面白いのは、冨永昌敬の力によるのでも、本谷有希子の力によるのでもなく、小池栄子の力によるのだ、と。小池栄子の力によって、この映画はこのようなものへと導かれたのだ、ということになる。
「ユリイカ」の小論も、要約すれば「小池栄子=あずさは素晴らしい」ということが書いてあります。