●ヘリコプターが飛んでいる。低い位置を、不自然なくらいゆっくりと。ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、と、攻撃的な打撃音が頭のまわりにまとわりつく。頭のなかを軽く連打されているようだ。空は真っ青ではなく、白い粒子が散らばり、それらが鈍く光っている。横から射す冬の光が機体に反射している。機体がギラギラして、強調された金属的な質が目に貼りつく。目の前にあるよりも強く、金属を、その重さ感じる。あんな重たい鉛の塊が宙に浮かんでいるなんて!ゆっくりと進むヘリコプターの浮遊感と、その機体の重量感と、表面のギラギラしたなまなましさと、攻撃的な音−振動が、同じ一つのものからやってきているということが、いまひとつうまく飲み込めない。
府中市美術館に、利部志穂さんの公開制作を観に行った。利部さんは、夜間道路工事の交通誘導員が着る、チカチカ点滅する電飾のついたナイロン製の黄色いベストを着て作業していた。まだ、制作というより、運び込んだ素材(荷物)を整理しているという段階らしくて、引っ越してきたばかりの散らかった部屋の片づけをしているみたいな感じだった。とはいえ、よくみると、既に随所に利部的細部がつくられているのが分かって、宝探しのような楽しさがあった。
利部さんに、前の展示の写真を見せてもらったのだが、なんか、すごく良い作品っぽい感じだったので、見逃したことが悔やまれた。