●法条遙の短編が載っているというので「小説新潮」を買ってきて読んだのだけど、これは面白くなかった。気の利いた短編が書けるような作風ではないことは他の小説を読めばわかるのだけど、それにしても…、という感じ。書き出しから既に面白くなりそうな気配はまったくないのだけど、この作家のことだからどこか一か所くらいですごいことが起きているかもしれないと期待して最後まで読んだけど、そんなことは起きていなかった(こういうメタフィクション的楽屋落ちは大概やり尽くされていて、よっぽどのものじゃないと成り立たないということを、それこそ「編集」の人が教えてあげるべきではないか、と思った)。とはいえ、この作家が小説を発想し練り上げてゆく時の「考えの筋道」のようなものがよく分かるような小説ではあった。
法条遙はたぶん、最初のアイデアから複雑なロジックを張り巡らしてゆくことを通じて、そこから面白いものが引き出されてくる感じの作家なのだと思うけど、そういう人は、ロジックを複雑にしてゆくことそれ自体が目的化してしまうという罠に陥りがちだという傾向があって(というか、作品にとって重要なロジックは必ずしも「物語の整合性」のことではない、ということが時に忘れられてしまう)、『404』とかはけっこうその罠にはまりかけている感じがあって、そのあたりはかなり危うい作家だと思うのだが、そこらへんを今後どう突き抜けてゆくのだろうかということも含めて、この作家には期待したい感じがするのだが。
「著者コメント」みたいのがあって、そこに『リライト』が四部作だと書かれていて、おーっと思った。それはとても楽しみだ。