●『ブレードランナー 2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)をアマゾンビデオで観た。同じ監督の前作『メッセージ』がぼくにはダメだったのでなかなか観る気が起きなかったのだけど、これは面白かった。
驚くべき新しいアイデアがあるわけではないし、前のめりになって「すごく面白い」となるような感じではないのだけど、三時間近い上映時間で「がっかりする」ところがほとんどなかった。この映画の面白さの大半は、どの場面においても常に一定以上の充実度が感じられるくらいに、細部にわたってつくり込みがしっかりしている(細かいアイデアもふんだんにあって充実している)ことと、そのつくりこみを背後で支える世界観や思想がちゃんとしているというか、現在のテクノロジーを踏まえたコンセプトに筋が通っているところにあると思う(ハリウッド版「攻殻」のような「頭の悪い」感じの細部のつくりこみとはまったく異なるという感じ)。たんにお金や技術が贅沢に使われているだけでなく、それが「どこに向かって」使われているのかが明確になっている、というか。たくさんのお金が投入される、話題の大きい映画で難しいのは、コンセプトやトーンの統一性を維持することだと思われるのだけど、この映画では(おそらく)監督のコンセプトや趣味が、映画の隅々にまで渡って反映されている感じなのだろう。
伝説的な映画の四半世紀以上を隔てた続編としては、これ以上は望めないというくらいに堅実につくられていると思った。すごく地味なつくりだとも言えるけど、ここまで地味に徹したことで、この映画の充実が生まれていると思う。
(でも、ディック的な要素はほとんどなくなってしまっているけど。)