●U-NEXTで『勝手にしやがれ!! 英雄計画』(黒沢清)を観ていて、今更思った(気づいた)のだが、この映画の驚くべき長回しのカットが可能になったのは、おそらく、再開発か何かのために、おおかたの住民が立ち退いたことで出来た空洞のような場所、それによっていわば「天然のオープンセット」となったような場所で撮影されているからなのだろう。この場所を見つけたからこそ、この映画はこうなった、のではないか。
この映画を初めて観てから26年くらい経つが、その時に感じた、大きな戸惑いを含んだ衝撃を今も憶えているし、そして、その戸惑いは今でもまだ解決していない。この映画をどう捉えればいいのかについて、今のぼくにも答えがない。
(黒沢清はこの作品で大きな転機―亀裂―を迎え、これ以降、九十年代後半の傑作群が作られていくのだが、それら傑作群を経てもなお、この作品は未だ解決されていないという感じがある。)