●東工大の講義、古典というか、既に歴史的評価が定まった二十世紀の海外作家の小説(の翻訳)を読んでいく授業から、そろそろ日本語で書く現代作家の小説に移行する。当初は、現代日本の小説家をできるだけ幅広く(といっても限界はあるが)学生に触れてもらいたいと考えていたのだが、方針を変更して、欲張らずに今まで通り、一回の授業につき一人の作家(基本、一つの作品)を深掘りして読んでいくことにした。
(この講義にかんしては、数ヶ月前から準備をしているのだが、週に二回講義があると、準備した分はみるみるとなくなって追いつかれて、講義の終盤になってきて自転車操業のようになってしまっている。)
この授業のために、既に何度か読んだ小説だとしても、一つの作品をかなりしつこく読むことになって、新たな発見がけっこうあった。まず、複数の候補から授業で取り上げる作品を選ぶために読み、決まった作品を準備のために熟読し、スライドを作りながら読み、授業のリハーサルで読み(100分に収まるかどうかの確認と、読めない漢字をスルーしてしまっている可能性があるので一度声を出して読んでおく、黙読だと読めない漢字を音ではなく意味で読んでいることがよくあって、そしてそのことに気づいていないこともしばしば、ということを、この講義で気づいた)、そして授業で読む(朗読する)。面白い小説は、しつこく読めば読むほど面白くなっていく。