2022/12/09

吉田喜重は、いわゆるシネフィルから大変に尊敬されている映画作家だけど、そうであるにもかかわらず、あの特異なフレーミングと特異なモンタージュをガッツリと分析した批評を見たことがないように思う(知らないだけ?、アカデミズムにはあるのか?、あるいは海外の文献なら? )。

『エロス+虐殺』の、辻潤の家の空間とか、クライマックスの(ものすごく執拗に反復される)日陰茶屋事件の大杉栄(細川俊之)が切られる場面のモンタージュとか、本当にすごいことになっていて、ちょっと他では見たことのないようなものだと思うのだけど。

吉田喜重といえば、ぼくとしては『エロス+虐殺』が圧倒的だと思うが、しかし、やや軽めの、大映ドラマのようでもある『告白的女優論』も、吉田版『殺しの烙印』とも言える『煉獄エロイカ』も好きだ。『煉獄エロイカ』が『殺しの烙印』を意識しているように見えるというとき、そこで意識されている(ように見える)のは、鈴木清順というだけでなく、むしろ、大和屋竺的なものであり、彼を介してつながる若松プロダクション的なものの方であるだろうと思う。

(『戒厳令』は苦手だ。)

『エロス+虐殺』の感想

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『告白的女優論』の感想

furuyatoshihiro.hatenablog.com

『煉獄エロイカ』の感想

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映画の中の絵画/「美の美」(吉田喜重)をめぐって(note)

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