●今期のアニメは「これだ」というものが見つからない(観ていないもののなかにあるのかもしれないけど)。一番楽しみに観ているのが『ウィッチクラフトワークス』で、まあ、面白いか、というのが『中二病でも恋がしたい! 戀』『バディ・コンプレックス』『銀の匙』という感じ。『ノラガミ』は様子見…。『スペースダンディ』はものすごい勢いで「嫌な予感」の方に突っ走っているように思う。『ウイザード・バリスターズ』の二話はお話がひどすぎる。いくらなんでも、法廷モノなのにあんなに簡単に被告を死刑にしたり無罪にしたりする裁判官とかありえない。裁判が開かれているのに弁護士(弁魔士)が犯人を追いかけているとか…。そのようなお話の雑さを、主人公が「少女」であることをもって(主人公のキャラによって)呑み込め、と言われてもそれはぼくには無理だ。
●原作のマンガの絵柄を全然知らないのだけど、『ウィッチクラフトワークス』は、主人公の男の子と女の子の絵柄が昔の(八十年代くらいの)少年マンガみたいな感じなのが不思議で面白い。だいたい、ヒロインの方が背が高いというのが、昔の少年漫画の王道パターンだし、ヒロインの顔がちょっと間延びしている(鼻と口の間に距離がある)感じとかも、昔っぽい。クールでアグレッシブ系のキャラなのに、顔が、キリッとしているというよりきょとんとしている感じが面白い。
昔のマンガのパターンでは、背が高くて、巨乳で、どこかぼさっとしている感じ女性キャラは、周囲からの性的な視線に無自覚な天然という役どころになりがちなのだけど、そういう感じのキャラが、この作品では「姫様」と呼ばれる学園一の美少女(つまり、「見られる」ことに自覚的であるはずの、隙のない、能動的なキャラ)となっていて、典型的なキャラ配置に対してずらしが入っている。しかし、実際のところ彼女は(物語上の役割として)主人公の男の子のことしか見ていないわけなので、ここに視線のずれが入っている。ヒロインの攻撃性や能動性は、ただ主人公を守るという点においてのみ発動し、それ以外のことにはまったく興味がないように見える。要するに、二重にずれていることで、結局ずれていない(結局、ヒロインには周囲からの視線はまったく目にはいっていなくて、男の子と二人だけの世界にいる、受動的な男の子だけが周囲からの視線を意識している)という感じなのだけど、この微妙な操作が、この作品世界の空間性と、ヒロインの不思議な魅力に繋がっているのではないかと思った。
●それと、この作品の倉石たんぽぽというキャラ(ネコ耳の、敵側のザコキャラの代表のような存在)の声が面白い。典型的なアニメ声とも言えるのだけど、個性のある声優たちの声のなかでも一際耳につく不思議な響きがある。ビジュアルよりも声が強いというか、大げさに言えば、絵がなくても声だけでキャラが成立しているような感じ。さらに言えば、この声がこの作品のトーンを決定しているんじゃないかとさえ思える。