2025-10-14

⚫︎続編の予告が出たので、改めて『閃光のハサウェイ』を観直した。この作品の特徴は、とにかくカッコイイこと。逆に言えば、カッコイイだけとも言える。カッコ良さがひたすら気持ちいいのがこの作品だ。

まず絵柄がカッコイイ。今まで観たあらゆるアニメの中で最もカッコイイと言っていいのではないか(カッコイイと上手いとは微妙に違うのだが)。全体的にシュッとしている。登場人物(キャラクターデザイン)がシュッとしているということもあるが、絵柄そのものがシュッとしている。キャラクターを描く絵柄や描線がシュッとしているということは他の作品でもあるが、ロケハンとそのフレーミングも決まっていて、どのカットも、フレーム全体としてシュッと決まっている。これが95分ずっと続くというのはなかなかない。

(2021年の一作目から、なかなか続きが制作されなかったのは、作画のクオリティが高すぎて、このクオリティを維持するためには制作費が嵩みすぎるからで、もう、続きは作られない、作れないのではないかとさえ思っていた。)

また、セリフがカッコイイ。説明的なセリフや、ただ一義的な意味を伝えるだけのセリフがほとんどない。ほとんどのセリフが、一捻り、ふた捻りしてあり、ぼんやり聴いていると何を言っているのかわからない。確かに、ちょっと気取りすぎで、キザで引いてしまう、という側面もある。たとえば、冒頭近くのシャトルの中でのケネスとCAの会話など。ただのこのセリフのやり取りは、ケネスという人物の、飛び抜けて優秀な男性軍人にありがちな(優秀な男性役人に、優秀なビジネスマンに、でも当てはなる)、客観的な裏付けを持つ自信からくる鼻持ちならないマッチョさの適切な表現になっている。だから、ケネスとハサウェイは全く異なる性質を持ち、普通ならば嫌い合うような二人であるはずだが(二人は、治安維持軍とテロリストのそれぞれリーダーでありそもそも「立場」として相容れないが「性質」としてもまた相容れないことが表現されている)、それでも「危険な場面の共有」があり、その中で、互いに相手の「実力」へのリスペクトが生まれると、そこに強い信頼関係が築かれる。その感じを、冒頭の場面は手際よく適切に描いているだろう。

また、物語やその展開も、余計な装飾もなくシンプルで、95分という時間の中で過不足なくスマートに語られる。ただし、この作品の背景には「ガンダム」という巨大な文脈が控えているため、余計な要素を削ぎ落としてシンプルに語られる物語が、同時に非常に濃厚な含みをもつハイコンテクストの作品となる。前提知識が特になくても、じゅうぶんに面白く観られるものではあるが、背後の文脈を知っていればいるほど、シンプルに語られる物語の背後に、あるいは、なんということもないように見えるちょっとした出来事やセリフのやり取りの背後に、立体的な奥深さが仕込まれていることがわかる。一見、シンプルでシュッとしているが、実は色々と折りたたまれていて奥深いという、このような作品のあり方もまたカッコイイのだ。

ガンダムUC」「水星の魔女」「ジークアクス」は、それぞれに(賛否はあるとしても)野心的であり、「ガンダム」というシリーズに対して挑発性を持つものだと思うが、その意味では「ハサウェイ」は保守的な「ガンダム」であるかもしれない。そうだとしても、その佇まいがとてもカッコイイ作品だ。