●雨が上がった午後、散歩していたら、ほんの何日か前まで車がいっぱい並んでいた中古車販売所に、車が一台もなくっていて、ガラス張りの事務所も、もぬけの殻でがらんとしていた。
●ぼくが花粉症で一番辛いのは、鼻の奥の粘膜のジンジンするような痛みで、鼻水や目の痒みも鬱陶しいのだが、それはある程度は薬で押さえられるけど、粘膜の痛みは強くなったり弱くなったりしながらずっとつづいて、その痛みが最も強くなるのが寝起きの時で、毎朝の目覚めが常に粘膜の痛みとともにあるのが、なんとも気が重い。
●目が覚めて、なかば寝ぼけたままテレビをつけたら、『高校教師』の再放送をやっていた。京本政樹が「誰も本当にぼくを愛してくれない」とかなんとか、暑っくるしい演技をしている時、フレームの右上の隅の、すごく遠くの方の道路で、緑色のタクシーが、間の抜けたようなゆっくりしたスピードで角をまがってゆくのが見えて、画面手前の暑苦しさとはまったく無関係な、そのタクシーの速度にすごく感動した。ああ、これが世界なんだなあ、と。こんなところにタクシーが写り込んでいるのは、言ってみれば演出上のミスなのだが、偶然写り込んだそのノイズは、まあこの程度はいいだろうと見逃されてたまたま生き残り、それが撮影されて十七、八年経った後に放映され、それをたまたまテレビをつけたぼくが目にすることが出来た。これって何かすごいことなんじゃないだろうか、とも思った。
●作家論のつづき。今日はひたすら短く刈り込む。しかし、ざっくりと切れるところは昨日のうちに切ってしまっているので、今日は、語尾の言い回しとか、表現を変えるとかで、一字とか二字ずつ短くしてゆくくらいしかやりようがない。とはいえ、その過程で、何カ所か、今までいまひとつ明解に言えてなかったところが言えたりしたところもある。でも、もうこれ以上削るのは多分無理。
●目が悪いので、ぼくのパソコンのワープロソフトのフォントは、ちょっとびっくりするくらい大きく設定してある。視力検査で、上の方にある文字みたいに、場違いにでかい。だから縦書きにすると一行がすごく短くなってしまうので、横書きで書くしかないのだった。
●ある方からメールをいただいた。メール受信中に(大量の迷惑メールの隙間に)差出人のところにその名前を見つけて、うわっと思って一瞬ビビったのだが、内容はビビるようなことではなく、とてもありがたい申し出で、ホッとしたと同時に、できればそうしたいと思っていたので、とても助かった。(わざわざ伏せるほどのことではないのだが、一応、私信だから。ただ、この驚きとビビりを記録しておきたかっただけ。でも内容を伏せるとどうしてもなにか意味ありげになってしまう。)
●ということで、『44マクベス』を最終日にもう一度観ることが出来ることになって、嬉しい。最終日は開演時間が違うみたいだから間違わないようにしないと。(全然伏せたことになってない。)