●夢。ちゃぶ台がわりの、蒲団のかかっていない出しっぱなし炬燵の下から、編みカゴを取り出すと、そのなかにあるマッチは湿気ていて、火をつける頭の部分が異様に膨らんでいた。握り拳くらいあるマッチの頭を擦って火をつけようとする。何度擦ってもなかなか火は点かず、しかし、大きな頭の内部には火種のようなものがくすぶっているのが見える。膨らんだ(さっきよりさらに膨らんだように見える)マッチの頭は肥大した分だけ密度がなくスカスカで、粗いスポンジのような多孔質の構造になっているから、内側でくすぶっている火種が奥の方に見えるのだ。息を吹きかけて、かすかな火種を燃やそうとするのだが、らちがあかない。
そこに誰かが別のマッチを持ってきてくれた。頭の部分がエメラルドグリーンで、柄の部分がすこし長い。ぼくはそれを、肥大した方のマッチの頭のなかに突っ込んで、内側の火種によって発火させようとする。マッチは綿飴に刺すようにスムースに入っていった。上手く火がついた、が、それはマッチではなく花火だったらしく、黄色やオレンジ色の炎が、シュワーッと激しく噴出した。二階の部屋にいると思っていたのだが、振り返るとすぐに縁側で、そこから庭に向けて火花を散らした。炎に驚いたウサギが縁の下に引っ込んだ。縁側に置かれた水槽で飼っている金魚に餌をやっている祖父の背中が見えた。