●約半月ぶりに電車に乗った。とはいえ、横浜線はまっ平らな相模平野を行くので風景が単調で、しかももう暗くなっていて外がほとんど見えず、さらに帰宅ラッシュの時間で混んでいた。田舎を走るので外に光があまり見えず、窓には車内の人々ばかりが映り、そうすると外へ抜ける空間が塞がれたみたいで、混んでいる密度がさらに増して感じられる。ぼくはスーツを着ている時に持てるような鞄を持っていないので完全に手ぶらで、八王子から東神奈川までの一時間近い時間を、ただ、ぼーっと考え事をして過ごした。久しぶりの人混みなので軽い違和感があり(駅の階段を上る時の足元の感覚がちょっと違ったりした、まあ、履きなれない靴を履いていたからだと思うけど)、二メートルくらい離れた場所にいる二人の女性の話している声がすぐ耳元で聞こえるみたいなちょっとした距離感の歪みがあったので、「うわー、満員電車なんて耐えられねー」みたいな錯乱状態になったら嫌なので(過去にそんな風になったことは一度もないけど)、なるべく慣れている感じにしとこうと思ってメガネは外した。違和感は間もなく消えて、すぐに、飽きるほど繰り返し乗ったいつもの横浜線になった。