2025-07-03

⚫︎昨日書いたル・コルビュジエの「小さな家」で、ひとつ、不思議なというか、こういうところが面白いんだよなあと思う点がある。下の図は、「小さな家」の間取り図で、Wikiarquitecturaから。これを見てもわかる、とてもシンプルで完成された間取りの平屋なのだが、この家には、この間取り図に描かれていない、後からそこだけぽこっと付け足したかのような空間がある。

https://en.wikiarquitectura.com/building/villa-le-lac/#より)

以下は、昨日の日記でリンクした動画からのスクショ。画面右下に、不自然に上に乗っかっているような部分があるのがわかる。なお、下の図は、上の見取り図と南北が(上下が)逆になっています。

https://www.youtube.com/watch?v=lY30C8SvTIMよりスクショ)

ここは、下の画像のように、二段ベッドの置かれた小さな部屋になっている。このスペースは、家の内部空間とは完全に切り離されていて、玄関の外(門を入った右手)にある、はしごみたいな外階段からしかアクセスできない。いわば、宙に浮いた「離れ」のような孤絶した部屋なのだが、なぜ、こんなにも洗練された平屋建築に、余計な空間が、しかも宙に浮いたような形で付け足されるのか。

(下は、https://www.youtube.com/watch?v=C_79me5yM2sよりスクショ)

もう一度、間取り図を見てみよう。下の図の、(1)の部分が、この家の住人である両親(母親)が眠るためのベッドが置かれるスペースで、(2)の部分がゲストルームとなり、息子(コルビュジエ)夫婦などが滞在するときに眠るためのスペースとなる。で、宙に浮いた「離れ」はいわば三つ目のベッドルームなのだが、こんなにささやかでシンプルな、年寄りだけが暮らす家で、ベッドルームが三つも必要だろうか。

考えられるのは、コルビュジエ夫妻の子供のための部屋だということだろうか。「おばあちゃんのうち」に行って、こんなベッドルームがあれば子供はとても楽しいだろう。だが、コルビュジエ夫婦には子供はいないようだ(当時30歳代のコルビュジエは、将来子供ができる可能性を考えていたかもしれないが)。

あるいは、コルビュジエには音楽家の兄(ピエール・ジャンヌレ)がいるし、この家を共同で設計した従兄弟(ピエール・ジャンヌレ)もいる。家を訪れるのはコルビュジエ夫婦だけではないだろう。だから、予備的なベッドルームがもう一つくらいあっても、おかしくはない。

だが、問題は機能や用途ではない。ここまで形式的に完成されたものを作っておいて、わざわざ、その完成度を多少なりとも下げるような、やや異質な、そして孤立した空間をくっつけるという、そのこと自体がぼくにはとても面白く感じられる。この、妙に外れた空間がひとつあることで、この建築全体の空間の構築性に(対立とか衝突にまでは至らない)ある種の軋轢というか、ちょっとした構造的「ねじれ」のようなものが生まれて、空間性としての面白みが一層増しているように思われる。コルビュジエって、こういうところなんだよな、と、ぼくは思う。

(この孤立したベッドルームは、窓のガラス一枚を隔てて、屋上の空中庭園に接していて、窓は湖に向けてもひらけているのだが、この部屋から屋上に行くためには、階段を降りて、建物の外の敷地をほぼ一周してから、さらに階段を登る必要がある。このも「近さ=接続」と「遠さ=切断」の合わせ技よ。)

⚫︎追記。この家には、地下に貯蔵のためのスペースがあり、この隠された(マイナスの)スペース分が、上へ、プラス分としてぽこっと突き出している、と考えることもできるかも。

https://en.wikiarquitectura.com/building/villa-le-lac/#より)