●メモ。『隠れていた宇宙』(ブライアン・グリーン)には、現在の物理学が理論的に予想する多宇宙には、それぞれ異なる根拠、異なる組成をもつ五種類のものがあると書かれている。(1)空間の無限性と、そこにある物質の配列パターンの有限性から導かれる多宇宙、(2)インフレーション理論から導かれる多宇宙、(3)ひも理論(M理論)から導かれるマルチブレーンとしての多宇宙、(4)量子力学波動関数に関する多世界解釈によって導かれる多宇宙、(5)ブラックホール研究の量子力学化によって導かれたホログラフィックな並行宇宙としての多宇宙、と。これをみると、宇宙は、多重的に多宇宙的であることになり、現代では、「この宇宙」が存在する唯一の宇宙であると考えることの方が不自然という感じのようだ。
このなかでは、(3)の、ひも理論(M理論)によるマルチブレーンや、(5)の、ホログラフィックな並行宇宙に関しては、現時点では観測や実験で検証しようのない、純粋に理論的な水準のものらしいけど、(2)のインフレーション理論については、それを採用することでビッグバン理論の多くの不備を埋められて齟齬がなく、また、現在のところ理論と観測結果とが問題なく合致していて、かなり確実性が高く正しいと考えられている理論であるという。そして、一般相対性理論が正しいのなら必然的にブラックホールが存在するというのと同様に、インフレーション理論が正しければ必然的に宇宙は無限個存在することになる、と(インフレーションは、至る所で永遠に起こりつづける)。現代の物理学の理論は、かなり高い確率で、宇宙が無限個存在していることを予測していることになる。