●午後、というか、夕方に近い時間に外に出たのだが、今日はやけに光が澄んでいた。視力がよくない僕にも、メガネなしで、木の葉の一枚一枚がクリアーに見えるくらいに。こういう光の日は、おそらく年に何度もない。
●夢。バスに乗る。ぼく以外の客は、小さな子供を二人つれた母親だけ。次の停留所で終点だという時になって、バスはあきらかにいつもとは異なるルートをとる。大通りから路地に入り、どんどん細い道に入って行く。ルートが異なることは、ぼく以外のもう一組の客も気づいているはず。運転者は客たちの不信感を知っていて無視しているとしか思えない。バスの大きな車体で入ってゆくのは強引すぎると思われるほどの細い路地を通り、とうとう行き止まりに突き当たってしまう。三方を建物の背で囲まれたスペースで、いままでの路地よりはやや広いが、バスがターンするのはあきらかに無理だろう。いまさらだが、ぼくは運転手に、これはどういうことだと抗議する。運転手は悪びれることもなく、これは規定のコースで、これからUターンするから席につけと言う。親子連れはここでバスを降りたが、ぼく意地になって、Uターンなどできないだろう、出来るものならしてみせてみろと言って、バスに留まる。運転手がハンドルやペダルやレバーを複雑に操作すると、爪先立ちするみたいにして、バスの後方がふわっと浮かび上がって立ち上がり、前面だけを地面との接点として、回れ右するみたいにくるっと回転する感じになる。しかしそれは成功せずに、車体後方が浮かび上がったその勢いが余って、バスは上下逆に転倒してしまう。転倒するバスのなかから、親子連れがこちらを見ているのを、ぼくは見た。
●夢。ぼくは高校生で、教室にいる。しかし、ずっとサボってばかりで、かなり久しぶりの教室だったので、次の時間の教科が何なのか分からない。教師が教室にあらわれても、彼が何の科目の担当だったのかも思い出せない。そもそもぼくは、教科書もノートも持っていない。隣の席の学生が、○○が今日休みだから、○○のを使えばいいよ、と言って、○○の机のなかから「古典」の教科書を出して貸してくれる。やけに派手な装丁の教科書で、ぼくは今まで、そんな教科書を見たことがない。教科書をパラパラとみているうちに、一つの和歌に目がとまり、その和歌のあらわす鮮やかなイメージに魅了される。その時にはもう、これは夢であろうと察しはついていたので、起きてからもそれを憶えていられるように、何度も何度もそれを読み返し、記憶しようと努めた。しかし今、それをまったく憶えていない。
●夢。教室で、イヤホンをつけて音楽を聴いている。しかしふと気づくと、そのイヤホンの線は、他人のカバンのなかに繋がっていた。
●見た夢について、そのニュアンスまでも、出来るだけ正確に記述しようとして、何度も書き直し、ようやく、うん、たしかにこんな感じだったと、一定の満足を得たのだが、そう思ったところで目が覚めた。