●散歩する。途中の畑に、トマトが植えられていた。ほとんどの実がまだ青かったが、ぽつりぽつりといくつか、赤く熟しているのがあった。蒸し暑いなかずっと歩いていて喉が渇いていることもあり、その実の赤が強烈に目に入って、それがやけに美味しそうで、その実をもいで、もぎたての実にがぶっと噛み付き、実から汁がしたたり、口のなかに水分と酸味がひろがり、というところを想像して、誰かまわりに人がいないか周囲を見回して、畑のなかにずかずか入り込んで、一つの実をもいで、という行動をイメージするのだが、もう子供じゃないし、みつかったら「ごめんなさい」では済まないので、その衝動を辛うじて抑制する。しばらく行くと自販機があり、ペットボトルのミネラルウォーターを買って、半分ほど一気に飲干し、すると汗がだーっと吹き出してくる。半分残ったペットボトルを手に持って、再び歩きはじめた。実現する事なく失われたトマトの味と水分と赤い色のイメージが、しばらく頭のなかに居座る。(後から八百屋とかで買っても遅いんだ ! 「あれ」をもがないと ! )