●イメージは、どう読まれるのか。つい最近のことだが、中国の人民服をイメージしたと広く言われている「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」のジャケットで見られるYMOの初期の赤い衣装について、デザインした高橋幸宏がそれを否定していることを今更知った。あれは、制服辞典のようなもので見つけた、日本の古いスキー服からきているデザインで、ウエストのところが絞ってあったりする、と発言している。そして、実際に人民服のイメージを検索して見てみると、確かにYMOの衣装とあまり似ていない。
では、なぜ広く「人民服を意識した」と言われるようになったのか。まず第一に、初期YMOには「東洋人の紋切り型」を意識的に演じるというコンセプトがあることが広く知られている、という点があるだろう。そしてもう一つ、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」のジャケットの中央に映っているマネキンや、YMOが大々的に行った最初のライブと言える1979年のLAのグリークシアターで舞台中央に位置する高橋幸宏が、「人民帽」をかぶっているということが大きいだろう。
つまり、イメージとしては(というか、イメージを読む「とっかかり」としては)、衣装それ自体のフォルムよりも「人民帽」の方が強くアピールして、人民帽がイメージ全体を制御する視覚的「換喩」のように作用したということだろう。東洋＋人民帽＋赤→「中国・人民服」という意味的関連が、眼にみえる視覚的細部(視覚的判断)よりも強く働いてしまった、と。だが、この「誤読」が結果として、YMOのプロモーションに大きなプラスとして作用するのだ。
(人民帽という小さなフックが加わることよって、衣装の赤に、視覚的作用よりも強い「赤＝共産主義」という意味作用が付与された。)
(追記。メンバー全員が着用しているというわけでもない、フレーム内の一要素としてたった一個あるに過ぎない「人民帽」が、フレーム全体、イメージ全体の「解読の仕方」を決定的に方向づけてしまったということは、驚くべきことであり、恐ろしいことだ。)
では、この「誤読」は偶然なのか、ある程度仕組まれたものなのか。つまり、衣装をデザインした高橋幸宏にその意図がなかったとしても、アルバムジャケットのデザイナーやアートディレクターはどう考えていたのかは、また別の話だ。人民帽は、「東洋的なもの」を感じさせるための多くのアイテムのうちの一つにすぎないと考えていたのか、それとも、「人民帽」の持つ意味的磁場が、イメージ全体に決定的な方向づけをしてしまうことが意図(意識)されていたのか(全体としてチャイニーズを意識させるイメージとなることを意図してデザインされたのか)。つまり、未だ作り手の側にあるこの時点において既に、複数の視点があり、読みがあり、狙いがあり、創造が、(つまり誤読可能性が)ある。
どちらであるのかは調べてみないと分からないが、どちらであるにせよ、多くの人々(観衆)がデザインを「その意図通り」に受け取るかどうかは、そのデザインを実際に世に出してみなければ分からない。もちろん、作り手の意図通りに読むのが「正しい」というわけではない(作り手の内にさえ「誤読」が畳み込まれているかもしれない)。その意味で、イメージの半分は観衆によって作られる(ある意味、人は―-ぼく自身も含めて-―イメージを雑にしか見ないが故に揺らぎがある、ということでもあるが)。
つまり、作り手が意識的に文脈を読んでそこにコンセプトをのせるなどということが、そんなに「狙い通り」にできるはずなどなく、その手の話の多くは、(多くの偶発的なものが折り重なって)たまたまうまくいったことから、遡行的、事後的に作られたものだと考えられる。
(YMOの場合は、演奏が圧倒的に素晴らしかったという事実が、まず何よりも強くあるのだが。)
COSMIC SURFIN' - YMO 1979 LIVE at THE GREEK THEATRE - YouTube
●ようやく、「アイドル三十六房」の「年忘れ ! Rグランプリ 2022」をアーカイブで観た。今回も、よい・面白い曲を教えてもらえた。
2022/12/27(火)OA『南波一海のアイドル三十六房 年忘れ！R-グランプリ2022』Archives - YouTube
【PV】五三《英語版》- Go-San (Miscalculations) English Version - - YouTube (3776Extended)
E.S.P. - YouTube (SAKA-SAMA)
ライラック・ランデブー - YouTube (SAKA-SAMA)
sommeil sommeil「とけあいたい」 - YouTube
Howlite - YouTube (椋本真叶)
そして、2022年も圧倒的にRYUTistが素晴らしかった。
RYUTist - 朝の惑星 作詞・作曲・編曲 : 君島大空 【Official Audio】 - YouTube
とはいえ、佐藤乃々子が卒業してしまうのだなあ…(RYUTistでは、この二曲が好きすぎる)。
RYUTist - 水硝子【Official Video】作詞・作曲・編曲：君島大空 - YouTube
RYUTist - 黄昏のダイアリー【Official Video】作詞：清浦夏実 作編曲：北川勝利・沖井礼二 ストリングスアレンジ・プログラミング：Tansa - YouTube
あと、この曲もすごい。
