⚫︎『海辺へ行く道』(横浜聡子)について、パンフレットのテキストには書ききれなかった特徴の一つに、140分という上映時間がある。だいたい二時間くらいという常識的な上映時間から少しだけズルッとはみ出している感じ。90分から100分くらいでシンプルに語られる物語ではなく、かといって、160分から180分くらいという大作映画のリズムでもない。常識的な時間感覚に対して少しだけだらっとしている感覚。
たとえばぼくはここで『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順)を思い出す。『海辺へ行く道』と『ツィゴイネルワイゼン』とは、画面がスタンダードサイズであることと、140分程度の上映時間を持つということ以外は特に似ているというわけではない。ただ、時間(上映時間)の中で時間(時間の感覚)を失うという感じが、少し近いように思えた。
ぼくは『ツィゴイネルワイゼン』を50回くらいは観ていると思うが、毎回、観るたびに、え、ここで終わり ? 、という感じで「いきなり」バツッと途切れるように終わる。時間の中で時間に迷っているうちに、その宙吊りされた持続が唐突に途切れる。『海辺へ行く道』には唐突に途切れる感じはなく、「終わるよー、もうすぐ終わるよー」という雰囲気をけっこう濃厚に出した上で、ややひっぱり気味にすぅーっと終わる。だが、上映時間という虚構の時間のリズムの中で、現実的な時間が徐々に失われ、時間の感覚が変容していく感じには、近いものがあるように思う。
(虚構の時間と現実的な時間感覚がズレていくというのは、どんな映画でも、程度の差はあれ皆そうなのではないか、とも言える。だとすれば、常識的な「映画を観る時間の感覚」からズレていく、ということかもしれない。)
⚫︎追記。下の画像がパンフレット。この映画の宣伝用のビジュアルはだいたい水色を基調にしたデザインなのだが、パンフレットだけがいきなり暖色なので、これがこの映画のパンフレットだとはわかりにくいかもしれない。デザインとしては良いと思う。
