⚫︎鴻池留衣の「フェミニストのままじゃいられない」が映画化されていた(映画のタイトルは『本当にあった話(の話)』)。この小説がどういう風に映画になるのか、ちょっと想像つかない感じだが。そして、映画公開を機に原作の「フェミニストのままじゃいられない」が文藝春秋社から出版されるようだ。素晴らしい。タイトルは映画のタイトルに合わせる感じみたいだ。確かに「フェミニストのままじゃいられない」というタイトルは捻りすぎていてわかりにくくて「売りにくい」とは思う。ただ、捻りすぎるところこそがこの作家なのではないかとも思う。
鴻池留衣の長編を全部読んだが、圧倒的にすごいのは「すみれにはおばけが見えた」で、次にすごいのが「フェミニストのままじゃいられない」だと、ぼくは思う。だからこの両作品が本になって読めるようになるのは素晴らしいことだ。
「わがままロマンサー」で、それ以前の初期作品からの明らかな飛躍があり、しかしこの作品は谷崎的なもののオマージュの一種と言えなくもないのかなあと、読み直してみて思った(それが悪いと言っているのではない)。しかしその後の「スーパーラヴドゥーイット」「フェミニストのままじゃいられない」「すみれにはおばけが見えた」になると、もう誰に似ているとかは言えない、独自のものになっていると思う。正直に言えば、「スーパーラヴドゥーイット」は、途中まではすごく面白いがラストがちょっと納得いかないかなあと思ってしまった。殺戮エンドっていうのは「毒」としてもちょっとありがちではないか、と。読みながら、面白いけど、この話をいったいどうやって終わらせるのだろうか、よっぽどすごい仕掛けがないと終わらせられないんじゃないないか、と、期待を膨らませ過ぎたせいかもしれないが、この終わり方だと普通かなあ…、と思ってしまった。
しかし「フェミニストのままじゃいられない」「すみれにはおばけが見えた」は文句なく面白い。「フェミニストのままじゃいられない」は、え、ここで終わり…、という感じで終わるが、そこには良い意味でのはぐらかされた感があった(ああ、徹底してどこにも着地しないのだな、という納得)。
そして、「すべてを抱きしめる」で、またちょっと感じが変わった。この感じがいったいどこへ発展していくのか。
⚫︎さらに、『青木淳悟初期作品コレクション』も出る。素晴らしい、素晴らしい。そして、「四十日と四十夜のメルヘン」をまた書き直したのだという。
(「四十日と四十夜のメルヘン」は、新人賞受賞「新潮」掲載バージョンと、単行本収録バージョン、そして文庫版バージョン、と、三つのバージョンがあるが、それにもう一つ付け加わることになる。)
⚫︎鴻池留衣がデビュー10年で、青木淳悟は20年なのか(20年じゃない、23年だ)。